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大阪地方裁判所 平成4年(ワ)11553号 判決 1993年11月10日

A事件原告

田中忠彦(1)

有限会社八平(2)

右代表者代表取締役

斉藤照

A事件原告

西健男(3)

木下千鶴(4)

A事件原告(反訴被告)

松下清次(5)

小林米一郎(6)

A事件原告(反訴原告)

井村國三(7)

A事件原告

井村昭弥(8)

伊藤利也(9)

小川俊子(10)

北口源市(11)

西川文子(12)

後藤一善(13)

社会福祉法人阪南福祉事業会(14)

右代表者理事

永野孝

A事件原告

辻智(15)

古川毅(16)

福本尚三(17)

岡部正美(18)

勢田冨夫(19)

西山律代(20)

乾慶行(21)

八木升(22)

服部良雄(23)

三木克宏(24)

広川弘治(25)

山本弥素典(26)

野口タカ子(27)

田中拓実(28)

濱口博志(29)

川邉数雄(30)

鳥居寛(31)

松本静子(32)

高島音次(33)

A事件原告(反訴被告)

西田達生(34)

A事件原告

山本栄(35)

中嶋好子(36)

酒井三郎(37)

佐々木温子(38)

A事件原告(反訴被告)

由上登(39)

島田憲一(40)

A事件原告

天岸寛晄(41)

宮西輝夫(42)

A事件原告(反訴被告)

平田郁代(43)

原寅一(44)

田中茂(45)

A事件原告

入江博(46)

A事件原告(反訴被告)

渡辺久市(47)

西沢清子(48)

A事件原告

森下京子(49)

右原告(反訴被告)ら訴訟代理人弁護士(原告後藤一善を除く)

後藤一善

B事件原告(反訴被告)

原田啓子(50)

三宮英二郎(51)

天羽恒雄(52)

髙尾保男(53)

C事件原告(反訴被告)

久保敏夫(54)

D事件原告(反訴被告)

松田健治(55)

D事件原告

浦留吉(56)

株式会社扇屋式服店(57)

右代表者代表取締役

浦留吉

E事件原告(反訴被告)

西田嘉子(58)

西田透(59)

大西頼子(60)

右原告(反訴被告)ら一一名訴訟代理人弁護士

赤木淳

被告

伊藤忠商事株式会社

右代表者代表取締役

堀田輝雄

右訴訟代理人弁護士

阪口春男

今川忠

三木秀夫

被告

伊藤忠ハウジング株式会社

右代表者代表取締役

鷲巣良男

被告(反訴原告)

白浜緑光台管理株式会社

右代表者代表取締役

赤羽憲昭

右被告(反訴原告)両名訴訟代理人弁護士

得津正熈

主文

一  被告白浜緑光台管理株式会社は、別表⑤記載の原告らに対し、同表記載の金員及びこれに対する同表記載の起算日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、連帯して、別表⑥記載の原告らに対し、同表記載の金員及びこれに対する同表記載の起算日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

三  反訴被告らは、反訴原告に対し、別表②の「請求債権」欄記載の各金員及びこれに対する同表記載の起算日から各支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

四  原告井村國三、同辻智、同田中拓実、同鳥居寛、同佐々木温子、同島田憲一、同入江博、同渡辺久市、同森下京子、同天羽恒雄、同髙尾保男、同松田健治、同浦留吉、同西田嘉子、同西田透及び同大西頼子の本訴請求並びに右以外の原告らのその余の本訴請求をいずれも棄却する。

五  本訴について、

原告井村國三、同辻智、同田中拓実、同鳥居寛、同佐々木温子、同島田憲一、同入江博、同渡辺久市、同森下京子、同天羽恒雄、同髙尾保男、同松田健治、同浦留吉、同西田嘉子、同西田透及び同大西頼子と被告らとの間に生じた訴訟費用は、全部右原告らの負担とし、

別表⑤記載の原告らと被告白浜緑光台管理株式会社との間に生じた訴訟費用は、これを一〇分し、その九を右原告らの、その余を同被告の負担とし、右原告らと被告伊藤忠商事株式会社及び被告伊藤忠ハウジング株式会社との間に生じたものは、全部右原告らの負担とし、

別表⑥記載の原告らと被告らとの間に生じたものは、これを一〇分し、その八を右原告らの、その余を被告らの負担とする。

六  反訴に関する訴訟費用は、すべて反訴被告らの負担とする。

七  この判決は、第一項ないし第三項について、仮に執行することができる。

事実及び理由

〔略称 以下、AないしE事件の原告(その一部は反訴被告)を単に「原告」、右各事件の被告伊藤忠商事株式会社を「被告伊藤忠」、同被告伊藤忠ハウジング株式会社を「被告ハウジング」、AないしE事件の被告兼反訴原告の白浜緑光台管理株式会社を「被告管理会社」と呼称し、被告伊藤忠が開発した和歌山県西牟婁郡白浜町字瓜切に所在する「白浜緑光台」と称する別荘住宅地を、「白浜緑光台」又は「本件別荘地」という。)

第一請求

一本訴(A・B・C・D・E事件)

被告らは、別表①記載の原告らに対し、連帯して、別表①の「請求債権」欄記載の各金員及びこれに対する左記の起算日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

A事件原告らに対し、被告伊藤忠は、昭和六三年五月一〇日から

被告ハウジングは、昭和六三年五月八日から

被告管理会社は、昭和六三年五月八日から

B事件原告らに対し、被告伊藤忠は、平成二年一二月七日から

被告ハウジングは、平成二年一二月七日から

被告管理会社は、平成二年一二月七日から

C事件原告に対し、被告伊藤忠は、平成三年一月八日から

被告ハウジングは、平成二年一二月二八日から

被告管理会社は、平成二年一二月二八日から

D事件原告らに対し、被告伊藤忠は平成三年三月二〇日から

被告ハウジングは、平成三年三月二〇日から

被告管理会社は、平成三年三月二〇日から

E事件原告らに対し、被告伊藤忠は、平成三年九月四日から

被告ハウジングは、平成三年九月五日から

被告管理会社は、平成三年九月四日から

二反訴

反訴被告らは、反訴原告に対し、別表②の「請求債権」欄記載の各金員及びこれに対する同表の「起算日」欄記載の日から各支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一事案の要旨

1  本訴

本訴は、温泉付別荘地として被告伊藤忠が分譲販売した「白浜緑光台」について、同別荘地の所有者等である原告らが、被告伊藤忠並びに同別荘地の管理をしている被告ハウジング及び被告管理会社に対し、温泉付別荘地と宣伝して購入させながら、実際は「冷泉」であった等として、管理契約及び温泉供給契約につき、詐欺による取消、錯誤による無効、被告らの管理の杜撰さ等を理由とする契約解除等を理由として、既に支払った負担金等の返還と損害賠償を求めた事案である。

2  反訴

反訴は、反訴原告(被告管理会社)が反訴被告らに対し、未払いの管理費と温泉使用料を請求し、反訴被告らが前同様の抗弁をもってその支払義務を争っている事案である。

二争いのない事実等

1  当事者

(一) 原告ら

原告ら(原告株式会社扇屋式服店を除く)は、白浜緑光台において、別表①の「区画番号」欄記載の別荘地をそれぞれ所有している。その取得経過は次のとおりである。

(1) 原告小林米一郎(但し、区画番号三―一〇、三―一一、三―一三のみ)、同井村國三、同古川毅、同服部良雄、同川邉数雄、同西田達生、同山本栄、同中嶋好子、同入江博及び同三宮英二郎は、白浜緑光台を分譲販売した被告伊藤忠からそれぞれの別荘地を購入した前主(原告三宮英二郎については、前々主鳳印刷株式会社が被告伊藤忠から購入し、さらに前主有限会社宝温泉地所が鳳印刷から購入したものである。<書証番号略>)からこれを購入して取得したものである(以上の原告らを「転得者」という)。

(2) 別表①の区画番号二―一の別荘地は、訴外原田和幸が被告伊藤忠から購入したものであるが、同人が昭和五六年四月二日死亡し、原告原田啓子がこれを相続したものであり(<書証番号略>)、区画番号四―二〇の別荘地は、西田秀人(持分三分の二)と原告西田嘉子(持分三分の一)が共有していたが、西田秀人が昭和六〇年二月二三日死亡し、同人の持分を原告西田嘉子、同西田透及び同大西頼子が相続し(<書証番号略>)、その結果、原告西田嘉子の持分は合計三分の二、同西田透及び同大西頼子の持分が各六分の一となったものである(以上の原告らを「相続人」という)。

(3) それ以外の原告ら及び原告小林米一郎(但し区画番号三―一二のみ)は、いずれも被告伊藤忠から直接購入したものである。但し、原告株式会社扇屋式服店は、原告浦留吉所有地に建物を建築している者である(<書証番号略>)。

(二) 被告伊藤忠

被告伊藤忠は、大末建設株式会社に白浜緑光台の別荘住宅地を開発造成させ、昭和四九年一〇月ころから分譲販売しているものである。

(三) 被告ハウジング

被告ハウジングは、被告伊藤忠の白浜緑光台の販売について、その代理人となり、かつ、被告伊藤忠の委任を受けて、原告らと後記管理契約及び温泉契約を締結したものである。

(四) 被告管理会社

被告管理会社は、白浜緑光台における諸施設の管理業務及び温泉供給業務等を営むことを目的として、被告ハウジングが全額出資して、昭和五七年三月一七日に設立された会社である。

2  白浜緑光台の開発及び販売の経過等

(一) 開発

白浜緑光台は、もと東新不動産株式会社(以下「東新不動産」という)が造成に着手していたものであるが、後に被告伊藤忠がこれを引継いで完成させて、販売代理人の被告ハウジングが販売したものであり、販売区画数は、当初二九六区画が予定されていたが、後に六区画減少して、現実に販売されたのは二九〇区画である。

(二) 温泉

(1) 白浜緑光台には、湧出地が「瓜切」にある温泉源二か所から汲み上げた温泉を各戸に配湯する設備がなされており、被告伊藤忠は、販売代理人の被告ハウジングを介して、本件別荘地を販売するに際し、白浜緑光台は「白浜温泉に近く眺望絶佳の別荘地であり、温泉源二か所あり、全区画に温泉配管済みで各戸で専用の温泉を使用できる」と「温泉付別荘地」として宣伝していた。

(2) 後記白浜緑光台温泉給供契約書及び同温泉給供規程によれば、「源泉より汲み上げた温泉を何ら加熱することなくそのままの温度で給湯する」旨明記されている。

(3) 白浜緑光台の温泉供給システムは、源泉から汲み上げた泉温ある湯をそのまま各戸に配湯するのではなく、これを一旦貯水槽(一二〇トンと六〇トンの水槽)に貯え、一定量に達した後、各戸に配湯するように設計されており、この貯水槽には保温設備は設けられていない。

(4) 現在使用中の緑光台二号泉の湧出量は、一分間六九リットルである。

(三) 給水施設

(1) 白浜緑光台における水道施設は、白浜町営水道から供給を受けた水道水を七八トンの受水槽に溜め、これを二〇〇トンの高架水槽に汲み上げ、ここから口径一〇〇ミリメートル、約3.7キロメートルの本管で循環させ、二九〇戸の家庭に給水する構造となっている。

(2) 被告らは、給水を開始した昭和五〇年一二月以来昭和六〇年八月まで一度も受水槽や高架水槽の清掃をしていない。

(3) 被告らは、昭和六〇年一二月に白浜町から「給水施設改善」の行政指導を受け、昭和六一年秋、従来の貯水槽からの配水を止め、各戸が直接白浜町から給水を受けるように水道施設を改修した。

(四) 売買契約と管理契約及び温泉契約

被告伊藤忠の代理人である被告ハウジングは、原告らとの間で、白浜緑光台の別荘地を販売し、その売買契約に付随する契約として、白浜緑光台管理契約(以下「管理契約」という)及び白浜緑光台温泉供給契約(以下「温泉契約」という)を締結した(但し、原告株式会社扇屋式服店を除く。なお、転得者については、その前主又は前々主が被告伊藤忠と契約し、その後、所有権の移転に伴い契約上の地位を転得者が承継したことになる。また、相続人については、被相続人の契約上の地位を承継したことになる。以下、同趣旨で、転得者及び相続人とそれ以外の原告らを区別しないで記載する)。なお、被告管理会社は、転得者との間では、新たに管理契約及び温泉契約を締結している。

3  管理契約

管理契約の骨子は、次のとおりである。

(一) 目的(一条)

本契約は、被告伊藤忠が販売する白浜緑光台の諸施設の維持管理並びに環境保全のための必要事項を定めるものであり、本分譲地内の土地所有者及びこの土地を利用する者はこの契約を遵守するものとする。

(二) 管理者及び費用負担(二条)、諸施設の所有権(九条)

(1) 被告ハウジングは、被告伊藤忠の委任を受けて、管理者として、諸施設の維持管理に当たり、土地所有者は諸施設維持管理負担金(以下「施設負担金」という)及び管理費を負担する(二条一項)。

(2) 被告ハウジングは、諸施設の維持管理業務の全部又は一部を第三者に委託もしくは移管することができるものとし、土地所有者はこれを承諾する(二条二項)。また、三条記載の諸施設は、被告伊藤忠の所有であるが、同被告は、右諸施設を被告ハウジングもしくは第三者に移管することができることを土地所有者は確認する(九条)(以下、二条二項と九条をあわせて「移管条項」という)。

(三) 施設の範囲(三条)

本契約にいう諸施設とは次のものをいう。

(1) 集中汚水処理施設

(2) 道路及び付属構築物

(3) 街路灯

(4) 街路樹及び緑地

(5) 上水道施設

(6) その他分譲地内の公共の用に供する施設

(四) 管理業務(四条)

被告ハウジングが行う管理業務は次のとおりとする。

(1) 集中汚水処理施設の維持管理

(2) 道路及び付属構築物の維持管理

(3) 街路灯の維持管理及び電灯料の支払

(4) 街路樹及び緑地の維持管理

(5) その他分譲地内の公共の用に供する施設の維持管理

(6) 上記施設等に対する公租公課等の支払

(7) その他被告ハウジングが必要と認める事項

(五) 施設負担金(五条)

(1) 負担額

昭和五三年四月一日から同六三年三月三一日までの負担金として二〇万円。但し、右期間の途中で被告伊藤忠から別荘地を購入した場合は、日割計算に従い減額される。

(2) 負担金の取扱

被告ハウジングが預かる負担金は、同被告において補修引当金として積立し、使用の都度これを取り崩すものとする。但し、白浜緑光台の全区画(二九六区画)が完売されるまでの未販売分譲地分は被告伊藤忠が負担する。

(3) 負担金の使途

被告ハウジングは、負担金を三条の諸施設の修理、補修、部品交換のための材料費及び工費等、同被告が四条の業務に必要な通常費用に該当しないと認めたものに使用する。

(4) 報告

被告ハウジングは、二年目毎(偶数年次の四月末日まで)に同年三月末日までの二年間の負担金取崩状況について使途明細書を添えて土地所有者に報告する。

(六) 管理費(六条・二六条)

(1) 別荘地引渡日を起算日として、一か月一区画当たり三五〇〇円とする。なお、右金額は改定されうる(昭和五八年四月一日以降一か月四〇〇〇円に改訂)。

(2) 毎年度の金額(毎年四月一日から翌年三月三一日までの一二か月分)を一括して毎年四月末限り支払う。

(七) 負担金及び管理費の返還(八条)

負担金及び管理費は、理由の如何にかかわらず返還しない。

(八) 第三者承継及び届出(一二条)

(1) 土地所有者が分譲地及び建物を第三者に譲渡した場合は、譲受人に本契約を承継させると共に両者連名にて被告ハウジングに書面をもって届け出るものとする。

(2) この場合、土地所有者が被告ハウジングに既に支払った負担金及び管理費は譲受人が承継するものとし、被告ハウジングは土地所有者に返還しない。

(九) 契約の存続期間(二八条)

本管理契約の有効期間は本分譲地内に土地を所有する間、存続するものとする。

4  温泉契約

温泉契約の骨子は、次のとおりである。

(一) 目的(一条)

本契約は、被告伊藤忠が販売する白浜緑光台の土地所有者に対する温泉の供給と温泉源及び温泉施設の維持管理を目的とする。

(二) 温泉源及び温泉施設の所有者(二条・三条二項)

温泉源及び温泉施設は、被告伊藤忠が所有しているが、必要が生じた場合、被告伊藤忠はこれらの権利を第三者に譲渡することがあり、土地所有者はこれを承認する。また、被告ハウジングは、温泉の供給及び施設維持管理業務の全部又は一部を第三者に委託することができるものとし、土地所有者はこれを承認する(以下、二条と三条二項をあわせて「移管条項」という)。

(三) 管理者及び費用の負担(三条一項)

被告ハウジングは、被告伊藤忠の委任を受けて、温泉源及び温泉施設の管理と土地所有者に対する温泉の供給をし、土地所有者は、温泉施設維持管理負担金(以下(温泉負担金)という)と温泉使用料及び量水器保証金を負担する。

(四) 温泉の供給(四条)

被告ハウジングは、原告らに対し、源泉より汲み上げたものを何ら加熱することなくそのままの温度で供給する。但し、給湯量が多く汲上量だけでは十分給湯できないときは汲上温泉水に水道水を加水して給湯することもあるが、原告らはこれにつき異議を述べない。

(五) 温泉負担金(五条)

(1) 負担額

昭和五三年四月一日から同六三年三月三一日までの負担金として二〇万円を負担する。但し右期間の途中で本契約を締結した場合は、日割計算に従い減額される。

(2) 負担金の取扱

被告ハウジングが預かる負担金は、被告伊藤忠において補修引当金として積立し、使用の都度これを取り崩すものとする。但し、全区画が完売されるまでの未販売分譲地分は被告伊藤忠が負担する。

(3) 負担金の使途

被告ハウジングは、負担金を給湯施設・引湯施設等の温泉諸施設の修理、補修、部品交換のための材料費及び工費等、同被告が通常費用に該当しないと認めたものに使用する。

(4) 報告

被告ハウジングは、二年目毎(偶数年次の四月末日まで)に同年三月末日までの二年間の負担金取崩状況について使途明細書を添えて土地所有者に報告する。

(六) 温泉使用料(六条・温泉供給規程二四条)

(1) 一か月一区画につき、基本使用料(一五立方メートルまで)三〇〇〇円、一五立方メートルを超える使用湯料一立方メートルにつき超過使用料二〇〇円とする(基本使用料は、昭和五八年四月一日以降一か月三五〇〇円に改訂されている)。

毎年度の金額(毎年四月一日から翌年三月三一日までの一二か月分)を一括して毎年四月末日限り支払う。

(2) 土地所有者は、温泉の供給を受けるにあたり、量水器の保証金として三万円を預託する。

(七) 契約の期間(七条)

本契約の有効期間は、昭和六三年三月末日までとする。

(八) 譲渡及び承継(八条)

土地所有者は、その所有土地建物及び受湯施設を第三者に譲渡する場合遅滞なく被告ハウジングに通知し、承諾を得ると共に土地所有者の責任において譲受人にこの契約及び添付の温泉供給規程の各条項を承継させるものとする。なお、譲受人の使用有効期間は、譲渡人の残存期間とする。

5  被告管理会社による管理への移管

被告伊藤忠は、昭和五二年ころから白浜緑光台における諸施設維持管理業務及び温泉供給業務を被告ハウジングに委託し、同社においてこれらの業務に従事していたが、昭和五七年三月一七日、被告ハウジングの全額出資で、白浜緑光台の諸施設を所有し、その維持管理業務等を行う目的の被告管理会社が設立された。

そして、被告管理会社は、被告伊藤忠から右諸施設の所有権を含む一切の権利及び温泉源・温泉供給施設の所有権を含む一切の権利を譲り受けるとともに、移管条項に基づき、被告伊藤忠の委任により被告ハウジングが各別荘地所有者と締結していた管理契約及び温泉契約における被告ハウジングの各契約上の地位を承継し、同年三月一八日付書面でその当時の各別荘地所有者の全てに対し、右契約上の地位の承継等について通知し、同年四月一日より右各施設維持管理業務を担当している。

(なお、この点について、原告らは、被告伊藤忠の管理及び温泉契約上の義務を被告管理会社が交換的に承継したものではなく、重畳的に承継したものであるから、被告伊藤忠の義務も併存していると主張し、被告管理会社は、転得者との間では、それぞれの地位の承継を明確にするためもあって、被告管理会社と転得者間において新規に管理及び温泉契約を締結していると主張している。)

6  公共・公益施設の行政移管

(一) 宅地造成にともなう公共施設(道路、水道施設等)は、地方公共団体に移管すべき性質を持つものであり、造成地内の道路は、道路体系の一部としてのみ価値を有するもので、道路法四条が適用され、私権を行使することはできないし、水道事業は、生命健康に重大な関係があるから、管理に際しては高度の注意義務を要し、原則として市町村が経営するものである。

したがって、宅地造成の慣行としては、公共施設は、造成後相当な期間後に市町村に移管することを前提として造成されるものである。

白浜緑光台についても、東新不動産と白浜町との協定により、緑地及び公園については、工事完了検査許可後一か月以内に、道路については、別途覚書において定める時期に、給水装置施設(受水槽・高架水槽・配水池・配水管・給水管等)については、昭和五五年三月三一日に無償で白浜町に譲渡することが定められていた(<書証番号略>)。

(二) そして、白浜緑光台の公共・公益施設(以下「公共施設等」という)は、次のとおり、白浜町に譲渡されている(<書証番号略>)。

(1) 昭和五〇年一二月 緑地(二九二六番六八九以下一一筆)

(2) 昭和五七年七月一七日 高架水槽用地(四四〇平方メートル) 受水槽用地(四八一平方メートル) 機械室

(3) 昭和六三年八月二四日 公衆用道路(二万八三九四平方メートル) 防火水槽用地(一九二平方メートル) 防火水槽四基 消火栓二八基 水道施設(配水管5675.35メートル)

7  施設負担金の取り崩し

被告管理会社は、次に示すとおり、前記により積み立てた施設負担金を取り崩して各種費用に充てている(<書証番号略>)。

(一) 昭和五七年度

遊歩道補修 七五万円

遊歩道手摺取付 二〇万八〇〇〇円

第一次緑地化工事 八八万円

(二) 昭和五八年度

プール補修 五〇〇万円

遊歩道補修 九万円

第二次緑地化工事 三二万円

(三) 昭和五九年度

運動広場新設 二一五万七〇〇〇円

(四) 昭和六〇年度

遊歩道階段修理 六万円

(五) 昭和六一年度

上水道給水管変更工事 六二一万円

東緑地法面工事 三〇〇万円

(六) 昭和六三年度

道路移管時の補修 二六四四万円

8  管理費及び温泉使用料の未払い(反訴請求原因)

原告(反訴被告)らは、別表②記載のとおり、被告(反訴原告)管理会社と管理契約及び温泉契約を締結しているところ、同表の「滞納期間」欄記載の各期間について、同表の「請求債権」欄記載の管理費及び温泉使用料を支払っていない。

9  契約解除等の意思表示

原告らは、被告らに対し、後記のとおり、詐欺による契約取消の意思表示(管理契約及び温泉契約)、債務不履行による契約解除の意思表示(管理契約及び温泉契約)、事情変更による契約解除の意思表示(管理契約)をし、右各意思表示は、次のとおり被告らに到達した(A事件原告以外は、いずれも訴状送達によるものである)。

表意者

受領者

到達日

A事件原告ら

被告伊藤忠

昭和六三年五月一〇日

被告ハウジング

昭和六三年五月八日

被告管理会社

昭和六三年五月八日

B事件原告ら

被告ら

平成二年一二月六日

C事件原告

被告伊藤忠

平成三年一月七日

被告ハウジング

平成二年一二月二七日

被告管理会社

平成二年一二月二七日

D事件原告ら

被告ら

平成三年三月一九日

E事件原告ら

被告伊藤忠

平成三年九月三日

被告ハウジング

平成三年九月四日

被告管理会社

平成三年九月三日

三原告らの主張(本訴請求原因及び反訴抗弁)

1  管理契約について

(一) 詐欺による取消し

(1) 宅地造成にともなう公共施設等は、土地所有者の費用で建設されるものであるから、本来土地所有者に総有的に帰属すべきものであり、道路、水道施設、汚水処理施設(汚水処理施設については、白浜町に下水道がないため、公共移管はできない)等については地方公共団体に移管すべき性質を持っており、そのため、これら施設はすべて他の公共施設等と同一の規格で建設され、市町村は正当な理由なく市町村への移管を拒絶できないし、宅地造成の慣行としては、造成後相当な期間後に市町村に移管することを前提として造成される。

即ち宅地造成の許可条件として、白浜町宅地造成事業に関する指導要綱に基づき、造成者は造成が完了した公共施設等である道路、公園、緑地のすべてを無償で町に譲渡することを義務づけられており、それまでは事業者が自己の負担において、水道やその他の施設を善良に維持管理しなければならないと定められている。

本件宅地造成を企画した東新不動産と白浜町との契約においても、前記のとおり、公共施設等の残存緑地、道路、公園、水道等の施設について、白浜町に無償譲渡することが定められていた。したがって、東新不動産から造成を引き継いだ被告伊藤忠は、当然その条件を承継しているのであって、これらの施設の維持管理に要する費用を他に転嫁することはもちろん、原告らからこれを徴収することも許されない。本件の場合も、管理契約一四条で公共機関への移管を前提としている。

(2) しかるに、被告伊藤忠は、本来購入者である土地所有者全体の物件である道路や水道及び汚水処理施設等を自己の所有と主張し、白浜町と造成者との契約上当然行政移管しなければならない物件を、あたかも自らの所有物であり、管理の必要があるかのように装い、購入者である原告らの無知と無関心に乗じて、その旨誤信させて、管理契約を締結させたものである。

(3) 右のとおり、被告伊藤忠は、近い将来公的管理に服し、それまでは被告伊藤忠において無償で管理しなければならない物件を、あたかも同被告の所有で有償管理をしなければならず、その管理費を原告らが負担しなければならないものと欺き、原告らにその旨誤信させて、本件別荘地を購入した際にそれに付随する契約として管理契約を締結させたものであるから、原告らは、管理契約を詐欺により取り消す。

(二) 錯誤による無効

前記のように、原告らは、管理対象物件である道路等が被告伊藤忠の所有であり、その管理費を原告らにおいて負担する義務があるものと誤信して管理契約を締結したものであり、契約の要素に錯誤があり、無効である。

(三) 公序良俗違反による無効

前述のとおり、土地開発分譲においては、土地の利用上不可分な道路、上水道、下水道(汚水処理施設)等は開発地所有者に総有的に帰属し、道路や上水道は一定期間後に公有とされ、それまでは業者自身の負担で管理すべきものであり、汚水処理施設は、白浜町に下水道がないため公共移管はできないが、その場合でも、土地所有者に引き渡し、改めて土地所有者から管理の委任を受けるべきものであって、その管理費用は、実費と適正な手数料を限度とすべきである。しかるに、被告伊藤忠は、このような土地開発分譲における基本的な条理に反して、原告らにおいて管理する必要があるかの如く装い、原告らにその旨誤信させ、別荘地売買契約の締結に際し、半ば強制的に売買契約の付随契約として、管理契約を締結させたものであるから、右管理契約は公序良俗に反して無効である。

(四) 債務不履行による解除

(1) 被告らの債務不履行

管理契約は、管理費を対価とする労務の提供を内容とする継続的供給契約であり、契約の性質上、契約を継続することができなくなった場合は、これを解除あるいは中止することができる。

そして、管理契約によれば、被告ら(被告伊藤忠は管理契約の委任者であり、昭和五二年ころから昭和五七年三月三一日までは被告ハウジング、同年四月一日以後は被告管理会社が管理業務を承継しているが、以下、単に被告らと表示するも、趣旨は同じである)は、善良なる管理者の注意をもって、別荘地の維持管理を行うことを義務づけられており、原告らが支払う管理費は、通常の業務費用に使用し、それに該当しない施設の修理等には、被告らから預かっている施設負担金を充てることとし、施設負担金については、二年目毎に使途明細書を添えて報告する義務がある。

しかるに、被告らは、次のようにいずれの義務も契約の本旨に従って誠実に履行していない。

(イ) 報告義務違反

被告らは、原告らに対し、昭和五三年ころから同五七年ころまで、施設負担金の取崩しについて何らの報告もしていない。また、昭和五八年以降の被告らによる報告も極めて不十分である。昭和五三年から同六三年までの間に施設負担金に生じた利息(合計約七〇〇〇万円)の使途が不明であり、施設負担金の利息と温泉負担金の利息を混同して使用している可能性がある。

(ロ) 腐敗水の供給

白浜緑光台における水道施設や需要家庭への継続的給水から考察すれば、被告らは、水道法上の水道事業者として水道用水の供給事業を経営する者に該当する。仮に水道事業者に該当しないとしても、本件飲料水は、七八トンの受水槽に水を溜め、これを二〇〇トンの貯水槽に汲み上げ、さらに口径一〇〇ミリメートル、約3.7キロメートルの本管で循環し、二九〇戸の家庭に給水する構造となっている。水道法施行令一条の専用水道の除外基準は、導管の口径二五ミリメートル、全長一五〇〇メートル、水槽の容量一〇〇立方メートル以下となっているから、本件給水施設は、所謂専用水道というべきである。

そうすると、被告らには水道事業者に関する規定が準用され、被告らは、水道法上の義務を負うことになるところ、水道法一九条によれば、技術者の配置を必要とし、同法施行規則一四条によれば、毎日一回、色、濁り、消毒の残留効果を検査しなければならないことになっている。したがって、被告らは、同法に定める水道技術管理者を定め、水道の管理につき技術上の業務を担当させ、水道法二〇条による定期及び臨時の水質検査を行い、その検査記録を保存する義務がある。

しかるに、被告らは、これらの検査を全く履行しておらず、本件給水施設は、白浜町から供給を受けた上水道を貯水槽に溜めた後各戸に給水する構造となっており、別荘地の特殊性から長期間水が滞留することにならざるを得ない構造上の欠陥を有していたうえに、貯水を開始した昭和五〇年一二月以来昭和六〇年八月まで一度も貯水槽の清掃をせずに放置していた。昭和六〇年四月ころ、この地に定住した原告服部らが下痢症状を呈するなどの状態が生じ、飲料水に原因があるのではないかと疑い、白浜町水道部に検査を要請し、同水道部の立入検査の結果、含有塩素量〇の完全な腐敗水であることが判明した。しかも、貯水槽内に強力な発癌物質であるトリハロメタンが発生していることも判明した(わずかの居住者の中から六人もの癌死者と二人の癌患者が発生しており、関連が疑われる)。そこで、被告らに腐敗水の除去や半月に一度の完全清掃を確約させる等の応急処置をしたが、構造的欠陥のため水質の保全を期待できず(放水を繰り返しても基準塩素量0.1パーセントに達しなかった)、原告らが白浜町と交渉した末に、昭和六一年秋、白浜町営水道から直接給水を受けることになった。しかし、この間、腐敗水と気付かずに飲用し病気になった者さえでており、被告らの健康や安全を無視した無責任な給水管理は、重大な義務違反である。

(ハ) 現地管理の不備

被告らは、白浜緑光台に被告管理会社の本社を置きながら、専従社員を常駐させておらず、昭和六〇年三月までは、臨時雇いの雑役人夫一人を管理人として勤務させていたが、職場を放棄するなど日常の管理業務を怠ることが多かった。原告らの抗議により、昭和六〇年三月から夫婦者が定住するようになったが、それでも十分な管理がなされておらず、野犬が横行し、雑草が道路上に繁茂し、落石も放置され、溝の掃除もなされていない状況である。道路を白浜町に移管するため、同町が調査したところ、道路や側溝に一二〇箇所以上もの損壊箇所があった。被告らが長年にわたり道路等の管理を放置した結果である。

(ニ) 負担金等の目的外使用

① 上水道施設改善費用

前記のとおり、貯水タンクに飲料水を溜めて給水する構造は、別荘地の特殊性からみて、構造的欠陥であることは明らかであり、その改善のための費用は、被告伊藤忠が負担すべきである。にもかかわらず被告らは、昭和六一年度にその費用六二一万円を原告らの施設負担金から支出した。

② 道路移管の際の補修費

白浜緑光台内の道路は、完成後行政移管がなされることが前提となっており、それまでの間は宅地造成者である被告伊藤忠において管理すべきであるところ、昭和六三年に行政移管するにあたり検査した結果、未完成部分や一二〇箇所以上の損壊箇所があり、これらを補修する費用として二六四四万円を要したが、別荘地内の道路であって、使用頻度が極めて少ないことからみると、大半は道路工事の欠陥に基づくものであり、そのうえに被告らが早期に行政移管をせず、かつ、その間の管理が不十分であったために生じたものであって、その費用はすべて被告らが負担すべきものである。にもかかわらず被告らは、これを施設負担金から支出した。

③ 遊歩道等の管理費用

本件別荘地は、すべて公道に面していて、公道に通ずるための私道の必要はなく、販売広告にも私道負担がない旨明記されている。しかるに現実には、公道と公道を繋ぐ道路としての機能もない行き止まりの遊歩道と称する狭い通路がある。このような通路部分は、通路として残すのであれば、地目を公衆用道路に変更し、関係土地所有者に譲渡し、それらによる管理に任せるべきものであって、土地所有者全体で管理すべきものではない。しかるに被告らは、右遊歩道の補修費等として、昭和五七年度から昭和六〇年度までの間に施設負担金から合計一一〇万八〇〇〇円を支出している。

④ 公園施設・運動広場新設費用

被告らは、原告らに何らの通知も報告もせず、管理契約時点では管理の対象物件でなかった公園新設(合計四二〇万円)や運動広場新設(合計二一五万円)工事をし、施設負担金を使用した。

新設した公園は、もともと売却対象とされていた六区画が決壊して平坦部分が狭くなって商品価値がなくなったため、被告伊藤忠が税負担の軽減のため公園に転換したものであり、決壊部分の修復費用や公園化の費用は被告伊藤忠が負担すべきものである。

また、運動場についても、町の所有地を利用したものであり、被告らが負担すべきものである。

したがって、いずれも施設負担金から支出することは許されない。

⑤ プール補修費用

被告らは、昭和五三年ころ施工して設置したプールが昭和五七年六月、突然破損したため、その補修費として一五〇〇万円を要し、被告伊藤忠と大末建設と被告管理会社の三者が五〇〇万円ずつを負担したとして、施設負担金から五〇〇万円を支出した。しかし、そのような補修工事を施工した形跡はなく、仮に工事をしたとしても、プールのような施設は、利用者負担が原則であり、住民に維持費用の負担を強要できる性質の費用ではなく、施設負担金を使用するのは不当である。

(2) 道路、上下水道等の公共施設は、利用を強制されるとともに、利用を拒絶できないという性質があり、法規もしくは団体法的契約に基づく管理が望ましい。その場合、管理主体の公共性が欠くべからざるものであり、管理主体が公共団体でない場合、関係者の総意に基づくものであって初めて公共性が付与される。この場合、土地所有者の多数の意思による管理人変更の権利は絶対的なものであり、これを奪うことはできない。本件管理契約においては、管理人変更の手続規定がなく、一方的、運命的に被告らの管理を受けなければならないことになっているが、だからといって契約の解除がありえないとすることは許されない。本件管理契約は、元来個別的に契約したものである以上、個別的に解除できるのは当然である。

なお、原告らは、汚水処理施設の利用については、毎月五〇〇円の管理費用を支払うことを認めているが(したがって、別表①の「管理費」の金額は、現実に原告らが支払った管理費から月額五〇〇円を控除したものである)、大阪市の下水料金の基本料金が一〇kl月二九五円であり、白浜緑光台においては、電力料と一日一回の見回りの人件費程度しか費用は掛かっていないうえ、原告らはまれにしか使用しないことからすれば五〇〇円という料金は非常に高価な下水料というべきであって、原告らは解除の有無にかかわらず実費以上の負担を承認していることになるから、解除によって他の土地所有者に不利益が生じることはない。

(3) よって、原告らは、債務不履行を理由に、管理契約を解除する。

(五) 事情変更による解除

管理契約にいう諸施設とは、集中汚水処理施設、道路及び付属構築物、街路灯、街路樹並びに緑地、上水道施設、その他分譲地の公共の用に供するための施設等であるところ、現在、集中汚水処理施設以外の各施設はすべて白浜町に行政移管されており、被告らの管理対象物件は殆どなくなっている。

なお、集中汚水処理施設についても、白浜町は、平成三年ころから下水道工事計画を樹立し、約五年間の年次計画により施設を完了することを目標とし、平成五年四月現在において、町全域の約二割に相当する施設が完了し、白浜緑光台の至近距離の地点にも既に下水道が設けられている。下水道法三条によれば、本来このような施設は公共下水用として町が維持管理を行うべきものであり、本件施設が町の管理に移されるのも時間の問題である。

また、契約締結後に追加されたプール、テニスコート、公園等は、管理対象物件ではない。このように管理契約上の管理対象施設のほとんどが無くなった以上、契約当初の管理費の支払をする理由はない。

よって、原告らは、事情変更を理由に、管理契約を解除する(集中汚水処理の管理費五〇〇円を除く)。

2  温泉契約について

(一) 詐欺による取消

(1) 被告伊藤忠は、販売代理人の被告ハウジングを介して、本件別荘地を販売するに際し、白浜緑光台は「白浜温泉に近く眺望絶佳の別荘地であり、温泉源二か所あり、全区画に温泉配管済で各戸で専用の温泉を使用できる」と「温泉付別荘地」として宣伝し、「コックをひねれば専用温泉に早変わり」というようなパンフレットを配付し、かつ、現地に顧客を案内するなどして販売を促進し、説明会では、「各戸の蛇口における温泉の温度が二五度ないし三〇度を下らない給湯ができます」と明言した。

また、購入時に提示された温泉供給契約書等にも、源泉より汲み上げた温泉を何ら加熱することなくそのままの温度で給湯する旨明記されている。

(2) 原告らは、土地を買い、別荘を建てれば、何時でもある程度の泉温のある温泉の供給を受けることができ温泉旅館同様の温泉に浸れるものと被告伊藤忠や被告ハウジングの言を信用し、これに魅力を感じたればこそ、白浜緑光台を購入し、その付帯契約として、温泉契約を締結したものである。

(3) ところが、原告らが別荘を建て、温泉を使用しようとしたところ、泉温があるどころか、冷泉であって、所謂温泉として使用できるものではなかった。原告らにおいて、被告らに対し苦情を呈したところ、使用戸数が少ないので給湯し難いが、使用戸数が二〇戸以上になれば給湯できるようになる旨の回答があった。しかるに、その後使用戸数が次第に増加し、現在では既に一一二戸以上にも達しているにもかかわらず、一向に給湯される気配が見られないので、その理由を問い質したところ、被告管理会社は、「給湯管による温泉水の送水中の温度低下については責任がない」と主張した。

調査した結果、源泉から汲み上げた泉温ある湯をそのまま各戸に配湯するのではなく、保温設備も設けられていない貯水槽に貯え、一定量に達した後、各戸に配湯するように設計されており、このような構造では、それ自体泉温ある配湯は望み難いうえに、白浜緑光台は別荘地であり、配湯の需要者である原告らの多くは、この地に定住するのではなく、散発的に当地を訪れ、短期間に少量使用するだけであることなど、別荘地特有の事情を考慮すれば、契約どおりの泉温のある温泉を給湯できないことが当初から明らかというべきである。現に泉温のある温泉の供給はなされておらず、実質は冷泉に過ぎない。

また、湧出量(一号泉は既に枯渇し、現在使用の二号泉で一分間六九リットル)も足りず、一口当たりの給湯量一分間3.6リットルとして一九戸分しかなく、加水しなければならず、一トン六〇円の水道水を三倍の価格で販売していることになる。

なお、温泉の湧出地は「瓜切」となっているが、当地は、白浜町内における温泉地帯と異なり、昔から温泉が湧き出たこともなく、江戸時代この辺りに鉱山があり、各所に鉱石跡が残っており、採石後の地下水にはいろいろの含有物が含まれているため、これを検査すれば温泉類似の泉質が見られるが、混入物が多く、かつ濁っており、飲用に適さず、この使用によって却って水虫がひどくなったり、発疹が出たり、入浴毎に目が痛むなど、健康を阻害しており、温泉としての価値や効用は見られず、その点でも温泉とはいえない。

(4) 以上の次第で被告伊藤忠は、契約どおりの温泉を供給できないにもかかわらず、これが可能であるかのように原告らを欺罔し、原告らはその旨誤信して本件別荘地を購入し、売買契約に付随する契約として温泉契約を締結したものであるから、原告らは、被告らに対し、詐欺により温泉契約を取り消す。

(二) 錯誤による無効

原告らは、温泉付別荘地として泉温摂氏二五度ないし三〇度以上の温泉の供給を受けられることを動機として、かつその旨被告伊藤忠に表示して被告伊藤忠から別荘地を購入し、併せてこれに付帯する温泉契約を締結した。しかるに、原告らに供給されたのは、温泉ではなく、冷泉に過ぎない等前記のような状況であり、到底温泉と称することのできないものであったから、右温泉契約は、契約の要素に錯誤があり、無効である。

(三) 債務不履行による解除

温泉契約は、温泉使用料を対価とする温泉の供給を目的とする継続的供給契約であり、契約の性質上、契約を継続することができなくなった場合は、これを解除あるいは中止することができる。

しかるところ、被告らは、原告らに対し、温泉契約の本旨に従い、泉温摂氏二五度ないし三〇度以上の温泉を供給することができなかった。

よって、原告らは、債務不履行を理由に温泉契約を解除する。

(四) 期間満了による温泉契約の終了

温泉契約は、昭和六三年三月三一日、期間満了により終了した。

3  原告らの出捐及び損害について

(一) 負担金

原告らは、別表①「負担金支払年月日」欄(上段)記載の日に、それぞれ「負担金」欄(上段)記載の施設及び温泉負担金を支払っている。なお、転得者については前主が支払い、その地位を承継したものである。

(二) 管理費

原告らは、別表①「管理費支払期間」欄(上段)記載の期間、管理費として、昭和五八年三月分までは一か月三五〇〇円、同年四月以降は四〇〇〇円の金員を支払った(但し、汚水処理の費用として認める一か月五〇〇円をそれぞれ控除したうえで、「管理費」欄(上段)記載の金額の返還を求めるものである)。

(三) 量水器保証金

原告らは、別表①「量水器」欄(上段)記載のとおり、温泉契約に基づく量水器保証金として、それぞれ三万円の支払をしている。

(四) 設備費

温水ボイラー、ガス給湯器、オイルポンプ、温沸釜、給湯管などの設備に要した費用のうち、炊事、洗面等のための湯沸かしを除き、冷泉水を加熱し、浴用として使用するのに必要な費用とそのための燃料費として、原告らは、別表①「設備費」欄(上段)記載の金員を出捐した。

(五) 水道代

原告らは、腐敗水であることを知らずに昭和六一年一一月まで水道代として月額八五〇円(基本料金)を支払ってきており、その額は別表①「水道代」欄(上段)記載のとおりである(一年分は一万〇二〇〇円であり、七万一四〇〇円の者は、昭和四年一二月から昭和六一年一一月までの七年分、一万〇二〇〇円の者は昭和六〇年一二月から昭和六一年一一月までの一年分の趣旨である)。

(六) 治療費

飲用水が腐敗していることを知らずに飲用に供したため、腹痛、下痢症状等の身体の故障が生じ、薬の購入や医師の診察、治療費として、別表①「治療費」欄(上段)記載の金員を出捐した。

(七) 運搬費

原告らは、飲用水が腐敗していることを知り、これが改善されるまでの間、大阪市内などの自宅又は白浜市内から滞在期間に応じた必要分の飲用水を自動車で運搬せざるを得なくなり、それに別表①「運搬費」欄(上段)記載の費用を要した。

(八) 慰謝料

左の各原告らに対し、腐敗水を飲用したこと等による疾病の慰謝料として、別表①「慰謝料」欄(上段)記載額が相当である。

(1) 原告伊藤(原告番号9)、同乾(同21)、同服部(同23)

右原告らは、本件分譲地に定住している者であり、腐敗水であることに気付くまで長期間腐敗水飲用により身体的障害を被り治療を強いられた。

(2) 原告広川(原告番号25)

昭和五八年七月から昭和六一年一二月までの間、月平均四、五日滞在し、腐敗水であることを知らずに飲用し、下痢、腹痛を繰り返し、そのため義母は平成二年六月に病死した。

(3) 原告中嶋(原告番号36)

腐敗水であることを知らず、これを飲用し、また温泉水のため皮膚病を患った。

(4) 原告北口(原告番号11)

昭和五四年以来夫婦で定住し、高齢のため体力がないのに加え、長期間腐敗水であることを知らずにこれを飲用させられ、幾度か下痢、腹痛を繰り返し、再三病院で治療を受けたが、妻は最近病死した。

(5) 原告西山(原告番号20)

腐敗水であることに気付くまでの長期間これを飲用し、腹痛、下痢を繰り返した。

(九) 建設協力金

原告らは、別表①「協力金」欄(上段)記載のとおり、土地売買契約書に何らの取決めもないのに、建設協力金名下に三万円の支払をさせられた。

4  被告らの契約上の責任について

(一) 被告伊藤忠の責任

被告伊藤忠は、売主として、白浜緑光台の分譲地及び温泉施設等の諸施設の維持管理をし、温泉の供給業務を履行し、温泉付別荘地である白浜緑光台を好ましい状態に維持し、買主である原告らの権利に支障を来さないようにする義務がある。昭和五二年に被告伊藤忠の委任により、被告ハウジングが原告らと管理契約及び温泉契約を締結しているが、売主である被告伊藤忠は、自らの義務を第三者に重畳的に履行させることはできても、原告らの承諾なく、その義務を他に譲渡することはできず、管理の必要がなくなるまでその義務を免れることはできない。

(二) 被告ハウジングの責任

被告ハウジングは、管理契約及び温泉契約の直接の締結者として、被告伊藤忠と共に管理及び温泉供給の各業務を履行する義務がある。

(三) 被告管理会社の責任

被告管理会社は、被告伊藤忠や被告ハウジングの白浜緑光台管理及び温泉供給業務の履行をさせる目的で被告ハウジングの全額出資により設立された会社であり、その運営はすべて被告ハウジングの社員が行っており、形式的には別会社であるが、実質的には被告ハウジングと同一会社というべきである。そして、被告管理会社は、成立当初から被告伊藤忠や被告ハウジングのなすべき各業務の履行を承継し、重畳的に引き受けたものである。

(四) よって、被告らは、管理契約及び温泉契約に基づく義務を重畳的に負担するものである。

5  原告らの主張のまとめ

(一) 負担金等の返還請求及び反訴請求に対する抗弁

管理契約及び温泉契約は、①詐欺により取り消され、②錯誤により無効であり、③公序良俗に反して無効(管理契約のみ)であり、④債務不履行により解除され、⑤期間満了により終了(温泉契約のみ)した。したがって、右両契約に基づき、被告らに支払った前記施設及び温泉負担金、管理費及び量水器保証金について、これらを支払った原告らに対し、不当利得として返還する義務がある。

また、同様に、被告管理会社の原告らに対する管理費及び温泉使用料の請求は理由がない。

なお、原告らは、事情変更によっても管理契約を解除しているから、原告らが管理契約を解除した日の翌日以降の管理費の請求はその点からも理由がない。

(二) 債務不履行による損害賠償請求

水道代、設備費、治療費、運搬費及び慰謝料は、被告らが管理契約及び温泉契約上の債務の本旨に従った履行をしなかったことから原告らが蒙った損害であり、被告らは、債務不履行により右各損害を賠償する義務がある。

(三) 建設協力金の返還請求

原告らは、法律上の原因なく、被告らに建設協力金の名目で金員の支払いをさせられたものであり、被告らは、不当利得としてこれを返還する義務がある。

四被告らの主張

1  管理契約について

(一) 管理契約の適法性

宅地造成にともなう公共施設等は、将来地方公共団体に移管すべき性質を有するものであるが、いつその移管が実現するかは地方公共団体の財務負担をともなうため実際的には極めて困難な移管処理問題が存在するのであって、造成工事完成後、移管が実現するまでの間の所有権の帰属、その維持管理及び費用負担等の問題は、事業者と土地購入者間で決定すべき事項である。

白浜緑光台は、別荘地所有者が三〇〇名近くの多数に及び、しかもその居住地域が広範囲に散在し、社会的地位や意識にもかなりの相違があり、所有者を主体とする集団的ないし組織的な管理体制になじみにくいうえに、多種の諸施設で構成され、その所在場所も広範囲にわたり、その所有権は私的な権利行使が制限されたものであり、しかも将来地方公共団体に移管されるべき性質を有し、その際に容易に移管処理できることが必要であるから、被告伊藤忠は、公共施設等を含む諸施設について、その所有権は被告伊藤忠に帰属するものとし、その維持管理は被告伊藤忠の委任を受けた被告ハウジングが担当するものとし、その費用は、受益者負担の原則によって別荘地所有者が負担すべきであるが、直接にその費用を負担するよりも、管理者による管理業務に対する管理費として負担するほうが多数者に係わる管理業務の法的及び実務的処理として現実的かつ効率的であるから、管理費を定め、その旨の管理契約を締結したものであり、別荘地の管理として極めて適切かつ合理的であり、もとより適法である。

原告らは、移管対象物件は、総有的に土地所有者に帰属すると主張するが、法的根拠はない。仮にその主張を認めるとしても、管理と所有形態は別個のものであり、管理の要否や内容は、所有形態がどのようなものであるかによって一義的に決まるものではなく、管理契約によって決せられるものである。

原告らの詐欺・錯誤・公序良俗違反の主張は、いずれも理由がない。

(二) 公共施設等の移管時期の相当性

原告らは、公共施設等の所有者であった被告伊藤忠及び被告管理会社が白浜町への公共施設等の移管を意識的に遅滞させ、その間の管理費を不当に徴収した等として非難するが、移管の実態ないし実情についての誤った認識によるものである。公共施設等の移管については、施設所有者においてはその移管によって維持管理費用の負担を免れる利益を受けることになるのに反し、移管を受け入れる地方公共団体にとっては、その維持管理費用を要することで財政負担の増大を招くことになるから、双方の利害が相反する。そのため地方公共団体は、早急かつ単純に移管を受け入れようとはせずに、造成地の居住者割合及び年限経過等の一定の基準を設定し、これに適合しなければ移管に応じないことにしており、また、造成地の公共性によっても移管の遅速が生じており、別荘地のような日常生活との関連性の薄い宅地造成事業においては遅滞傾向にある。

被告伊藤忠は、宅地造成段階から白浜町と将来移管することを取決め、そのとおりに移管が実現するように努力してきたのであり、被告管理会社も、昭和五七年九月三〇日、白浜町に移管に関する陳情書を提出するなどの努力を重ねてきたが、建物の建設が五〇パーセント程度にならなければ移管を受けられないとの白浜町の意向により、当初の取決めどおりの実行はできなかったのであり、移管可能なものから順次移管し、昭和六三年八月には、道路、水道及び消防の各施設について移管が完了したのである。

したがって、この点に何ら債務不履行はない。

(三) 水道施設の設置経過、管理者、給水方式の変更の事情

被告伊藤忠は、宅地造成当時から水道給水については白浜町町営水道によることを予定していたこと及び設置される水道施設が公共施設として将来白浜町に移管されるべき性質のものであることを考慮していたことから、右施設の設計段階から白浜町水道部との間で協議や行政指導を受けて、受水槽、高架(貯)水槽及び配管等の水道施設工事を行っている。

そして白浜町は、当初から水道事業者として、被告伊藤忠が同町の行政指導等を受けて設置した水道施設を経由ないし利用して、原告らに対する水道給水を行うとともに、同給水量の検針を行い、原告らから直接に水道料金を徴収していたのであり、被告伊藤忠がこれに関与しうる権限は余くない。

しかし、宅地造成時における水道施設は、白浜町水道部の指導により白浜緑光台の最大利用数値(給水人口一四〇〇人、一日一人当たり六〇〇リットル)を念頭において設計されていたが、実際の利用率が少なく設計基準に合った利用に至っていなかったところ、昭和六〇年七月ころ、原告服部ら一部の居住者から「腐敗水である」との苦情を呈され、被告管理会社は、配管の端末水の悪化が予想されたので、白浜町水道部に水質検査を実施してもらい、同水道部との協議や指導を受けて、同年九月ころ、受水槽及び高架水槽の清掃を実施し、より良質の給水を確保するため、高架水槽の水位変更(調整)及び塩素自働供給装置の設置等の措置を講じた。

そのうえ被告管理会社は、昭和六一年九月ころ、同水道部の指導で、水道施設の白浜町への早期移管実現のため、受水槽及び高架水槽を経由せずに各住戸に直接給水する方式に変更することにし、同年一二月、右変更工事を完了した。そして、昭和六三年八月にそれ以前の移管済の施設も含めて、水道施設全部の移管が完了した。

このような給水方式の変更は、使用状況の実態に合わせた変更であり、これによって受水槽及び高架水槽が無用になったのではなく、将来使用水量が増大した場合にはその再使用が必要とされている。なお、水道の公共性から、同水道部が最大利用規模を考えて水道施設の設計・工事を指導したことは当然であり、当初の水道施設に構造上の欠陥があったわけではない。

本件水道について、水道事業者が白浜町営水道であることは前記のとおりであるが、原告らは、水道法三条の「専用水道」に当たり、被告らに技術管理者の配置義務や水質検査義務等があると主張するが、「専用水道」とは、「自家用水道その他水道事業の用に供する水道以外の水道であって、居住に必要な水を供給するもの」とされているところ、被告らが原告らに給水したことは一度もなく、水道事業者である白浜町営水道が原告らとの給水契約に基づき、給水をし、その対価を徴収していたのであって、「専用水道」に該当する余地はない。

なお、原告らは、腐敗水によって損害を蒙ったと主張するが、現地管理人は同様の水道水の供給を受けていたにもかかわらず、腐敗水で損害を蒙ったことはなく、腐敗水が供給されていた事実はない。

(四) 施設負担金の支出の相当性等

(1) 被告管理会社は、昭和五七年四月一日から白浜緑光台における公共施設等を含む諸施設について被告伊藤忠からその所有権を譲り受けるとともに、その受任者であった被告ハウジングが別荘地所有者と締結していた管理契約上の地位を承継し、被告伊藤忠から施設負担金五二一五万九五二六円の交付を受けたが、被告伊藤忠当時の利息(昭和五六年度までの合計二二六二万九八一八円)はすべて人件費に充当されており、兼務で管理を担当していた三名の人件費(同三四六二万一〇七八円)を充足するには至っていない。

(2) 施設負担金の支出の適法性

(イ) 上水道施設改善費用

被告伊藤忠が設置した水道施設は、前記のとおり白浜町水道部との協議や行政指導に基づくもので設計上の不備があったわけではなく、設計基準にあった利用量が得られないことから生じた問題を解決し、より良質の給水を確保するため、将来使用量が増大するまでの暫定的措置として給水方式を変更したものであり、これに要した費用は、管理契約三条五項、五条三項に基づき、施設負担金から支出することが許されるものである。

(ロ) 道路移管の際の補修費

白浜町へ移管された白浜緑光台内の道路(幅員六メートル部分2.7キロメートル、同五メートル部分1.4キロメートル、同四メートル部分1.2キロメートルで総延長5.3キロメートル)は、昭和五〇年三月、宅地造成に関する工事として、宅地造成等規制法による工事完了の検査が実施され、同年五月にその検査済証が交付され、建築基準法四二条一項五号所定の道路として、同法施行令の構造形態基準に基づき築造され、特定行政庁による位置指定を受けたものであり、道路工事に欠陥のなかったことは明らかである。しかし、その移管が完了した昭和六三年八月までに一三年間以上の長期間が経過しているだけでなく、その間の安全基準の強化変更もあり、検査主体も検査目的も異なることから、白浜町の要請により、補修工事を施工し、カーブミラー、ガードレール、消火栓の位置表示、消火栓かさ上げ及び幹線道路中央線等を設置し、合計二六四四万円を要し、これを施設負担金から支出した。

原告らは、被告らの管理が杜撰であったため多額の補修費用を要したと主張するが、移管までの被告らの管理が良好であったから、同町所在の他の類似別荘地にさきがけて本件道路の移管がなされたのである。広範囲の補修等の工事が必要になったのは、移管後における維持管理費用の支出にともなう財政負担及び昨今の営造物管理責任を考慮した白浜町の要請によるものであり、やむをえないものである。

(ハ) 遊歩道等の管理費用

白浜緑光台内の遊歩道は、温泉付別荘地としての良好な環境保全のための施設として設置されたものであり、通常の住宅団地の場合とはその設置目的ないし発想を異にする。その維持管理については、白浜緑光台の地域全体との調和を図らなければならないものであって、原告らの主張はこのような視点を忘れたものであり不当である。

(ニ) 公園新設、運動広場新設費用

被告管理会社は、白浜緑光台の温泉付別荘地として良好な環境の保全ないし確保の見地から、公園及び運動場の新設が有益であると判断して実施した。なお、右公園用地は、被告伊藤忠が販売用の別荘地六区画を無償で提供したものであり、運動場用地は、白浜町から無償で借り受けたものである。

被告管理会社の右行為は、管理契約三条六項、四条五項・七項及び五条に基づき許容されるべきであり、その支払は正当である。すなわち、管理契約三条が一項ないし五項に被告伊藤忠が既に設置した管理対象物件を掲げ、同条六項に「その他分譲地内の公共の用に供する施設」を管理対象として掲げているのは、今後別荘地としての環境を充実させ、その価値を高める施設を設置し、その管理をする趣旨であり、定住者が少なく、所有者が点在している別荘地においてはその総意を汲んで管理をすることが困難であることから、管理者に対し、そのような目的で負担金を使用することを認めた趣旨と解するのが相当である。

(ホ) プール補修費用

昭和五三年ころ設置されたプールが昭和五七年六月ころ突然破損し、造成事業者の被告伊藤忠、プール建設業者の大末建設株式会社及び管理者の被告管理会社の三者で原因究明について検討したが、結局判明するに至らず、補修費用一五〇〇万円を三者が各五〇〇万円ずつ負担することで解決したものであり、プール補修自体は、白浜緑光台の温泉付別荘地の管理業務として有益であり、かつ、右解決方法も合理的であったから、右補修費用の支出は正当である

(3) 報告義務

被告らは、昭和五六年度を除き、二年目毎に施設負担金について、原告らを含む別荘地所有者に対し、使途明細書を添えて報告している。昭和五六年度及び五七年度についても遅れたが昭和五八年四月に報告している。

なお、施設負担金の利息のうち、昭和五七年三月三一日までの分については当初から通常経費に支出していたため、報告の対象としていなかったが、被告伊藤忠が被告管理会社に管理契約上の地位を移転することを原告らに通知した際にその旨の通知もしており、原告らから特に異議がなかったので了解を得たと考えられる。

(五) 管理状況(管理対象及び管理内容)

(1) 白浜緑光台の公共施設等が白浜町に移管された後も、集中汚水処理施設、街路灯施設、街路樹及び未移管の緑地等、公園、運動場及びプール等の施設、管理事務所施設(管理棟及びその敷地)、遊歩道等の未移管の公共施設等、多くの管理対象施設があり、被告管理会社は、これらの現地管理業務を大末サービス株式会社(以下「大末サービス」という)に委託しており、これとは別に、被告ハウジングに対し、事務管理業務も委託している。

(2) そして、これらの管理業務の実情からすれば、管理対象物件の一部を白浜町に移管した後もそれ以前と管理業務の内容及び処理量にほとんど変化がないのに対し、この間の諸物価、人件費の高騰は著しく、それに対し管理費は昭和五八年四月一日以降改定されておらず、管理費を減額できるような状況にはない。したがって、管理契約に定められた対象物件の一部が行政移管されても、被告管理会社は従前の管理費を請求することができるというべきである。

(3) 原告らは、集水汚水処理施設について、近々白浜町に移管されると主張するが、白浜緑光台の右施設については、予定処理区域に含まれていないため、白浜町への移管対象に予定されていない。

(六) 管理契約の解除の不当性

管理契約は、白浜緑光台に土地を所有する期間は存続するものとし、土地所有者が土地及び建物を第三者に譲渡した場合は、譲受人にこの契約を承継させることとしているが、これは管理契約によって白浜緑光台の良好かつ健全な温泉付別荘地の環境を保全することを目的とするものである。

したがって、原告らが別荘地所有者でありながら、管理契約についてのみこれを解消する目的で契約の解除を主張することは、個々の所有者から徴収する管理費及び負担金で全体の施設の管理をするという管理契約の目的及び存立基盤を根底から揺さぶるもので、管理契約二八条に抵触するだけでなく、実際上も管理契約の存続を要望する多数の土地所有者との利害が直っ向から対立することになり、たちまち正常な管理業務の運営を阻害させて、混乱状態に陥れるものであり、到底許されない。なお、管理契約八条が管理費及び施設負担金について、理由の如何にかかわらず返還しない旨を定めているのは、管理契約の右のような特殊性に基づくものであり、集団的契約としての制約を受け、原告らが主張するような管理契約のみを個々的に解除することは認められない。

3  温泉契約について

(一) 本件温泉の品質等

温泉源は、「瓜切」に所在し、二つの泉源からなり、自噴はしていないものの、地下で湧出する温泉をポンプで汲み上げて各戸に供給するもので、和歌山県衛生公害センターによる「温泉分析書」によって適正証明がなされているとおり、泉温は約三〇度から三五度位あり、温泉法に定められた温泉である。

被告伊藤忠は、白浜緑光台の販売開始段階においては、一旦温泉貯水槽に蓄えてこれをボイラーで加熱する集中加熱方式を予定していたが、これを変更し、源泉より汲み上げた温泉をなんら加熱することなくそのままの温度で各戸に直接供給する方式にすることにし、被告伊藤忠の委託を受けた被告ハウジングと原告らを含む別荘地購入者との間で、「温泉は源泉より汲み上げたものを何ら加熱することなくそのままの温度で供給するものとする」と明記した温泉契約を締結したものである。この趣旨は、源泉から汲み上げた温泉が各戸に給湯されるまでに温度が低下しても、その低下した温度のまま給湯することを意味しており、販売員もそのような説明をしているのであり、購入者はそのことを承知して温泉契約を締結しているものである。

原告らは、被告らが誇大広告をしたと主張するが、原告らが提出している「コックをひねれば、我別荘地の浴槽が専用温泉に早がわり」(<書証番号略>)と記載された宣伝用パンフレットを被告らが使用したことはない(<書証番号略>も同様)。

また、原告らは、温泉が価格(水道水の三倍)と品質(飲用不適で低温)において商品価値がないと非難するが、温泉源の確保に巨額の開発費が投じられているうえに、温泉源から温泉を汲み上げて各別荘地に継続的に供給する体制を維持するために相当の経費を要することを無視するものであり、飲用適正や高温を標榜したこともなく、「温泉分析書」のとおりの品質は保たれている。原告らは一号泉(湧出量一分間五三リットル)は枯渇していると主張するが、現在汲み上げをしていないだけで、限界にきているような兆候はなく、二号泉からの汲み上げ量は一日約二〇〇トンで、これを一二〇トン及び六〇トンの水槽に貯めたうえで各戸に給湯しており、仮に各戸が一日0.5トンの温泉を使用したとしても泉量が不足することはない。なお、温泉を供給するにあたって、一定の状況下において、汲上温泉水に水道水を加水しうることを許容されている(温泉供給契約四条、同供給規程一三条各但書)が、未だ加水したことはない。

(二) 期間満了による温泉契約の終了と温泉負担金返還請求

温泉契約は、昭和六三年三月三一日限りで期限切れになったところ、原告らは、その後、被告管理会社からの再契約申入れに応じず、温泉負担金の返還を請求しているが、被告管理会社にはその返還義務はない。すなわち、白浜緑光台は温泉付別荘地であり、温泉源から汲み上げた温泉を供給する温泉施設を維持する必要性があることから、別荘地所有者が現実に温泉供給を受けると否とにかかわらず、例外なく一律に温泉契約を締結してもらい、温泉負担金の交付を受けたものである。期間満了後も、被告管理会社は、温泉供給を要望する土地所有者とは例外なく改めて五年間温泉契約を締結することとしており、白浜緑光台の温泉源及び温泉供給施設全体を維持管理していかなければならない立場にある。これら施設の維持管理は、温泉付別荘地である土地所有者全体の利益にもなるものであり、再契約をした者とそうでない者とで個別的に処理できない特殊な事情がある。再契約に応じなかった土地所有者には温泉負担金を返還しなければならないとすれば、被告管理会社は、再契約者から改めて負担金を徴収しなければならなくなり、他の土地所有者との間で複雑な関係及び不都合な結果を生ずるおそれがある。これらの事情を総合的に考慮すれば、温泉供給の稼働態勢にあり、かつ、原告らが白浜緑光台に土地を所有している間は、温泉負担金の返還を請求できないものと解すべきである。言い換えれば、原告らは、温泉契約を締結することにより、白浜緑光台において温泉を引きたいと思えばいつでも供給を受けられる権利を取得し、これに対し被告らは、いつでも温泉を供給できる体制を整えておかなければならない義務を負ったのであり、温泉負担金は権利金と同様の法的性質を有するものであって、温泉契約の期間満了時に負担金が残っていても原告らに返還する義務はない。

4  損害等について

(一) 負担金・管理費・量水器保証金・水道代・設備費・治療費・運搬費・慰謝料及び建設協力金についての認否は、別表①被告らの主張欄(下段)のとおりである。

(二) 建設協力金

建設協力金は、本件別荘地の購入者が建物を建築する際に生ずる道路等の損傷に充てるものである。本来は、建築者個々に実際に生じた損害に対する費用分担を求めるべきであるが、その損傷の程度を査定することは実際上困難であるから、一律三万円を決めて徴収しているものであり、不当利得でないことは明らかである。

5  被告らの責任について

原告らは、被告伊藤忠は売主として、白浜緑光台の分譲地及び諸施設を維持管理し、温泉の供給をし、温泉付別荘地として好ましい状態を維持する等の義務があると主張するが、これらの義務は、管理契約及び温泉契約に基づいて生ずるものであり、売主として当然に負うものではない。そして被告伊藤忠は、移管条項に基づき、昭和五七年四月一日をもって、被告管理会社に契約上の地位を移転するとともに管理対象物件等の所有物や負担金の残金等の一切を譲渡したのであり、右地位の移転は、免責的債務引受と解するべきであり、被告伊藤忠は管理契約や温泉契約上の義務を負担していない。

五争点

1  管理契約について

(一) 管理契約締結にあたっての欺罔行為の有無

(二) 管理契約締結にあたっての錯誤の有無

(三) 管理契約の公序良俗違反の有無

(四) 管理契約上の債務不履行の有無

(1) 報告義務違反

(2) 腐敗水の供給

(3) 現地管理の不備

(4) 負担金等の目的外使用

① 上水道施設の改善費用

② 道路移管の際の補修費

③ 遊歩道等の管理費用

④ 公園新設・運動広場新設費用

⑤ プール補修費用

(5) 管理契約の解除の可否

(五) 事情変更による管理契約の解除の可否

2  温泉契約について

(一) 「温泉」についての欺罔行為の有無

(二) 「温泉」についての錯誤の有無

(三) 「温泉」供給におけ債務不履行の有無

3  原告らの損害等の請求について

(一) 負担金

(二) 管理費

(三) 量水器保証金

(四) 設備費

(五) 水道代

(六) 治療費

(七) 運搬費

(八) 慰謝料

(九) 建設協力金

4  被告らの責任

第三争点に対する判断

一管理契約について

1  管理契約締結にあたっての欺罔行為の有無

(一)  原告らは、白浜緑光台の宅地造成によって設置される道路、水道施設、緑地等の公共施設等は、土地所有者の費用で設置されるものであるから、土地所有者に総有的に帰属するものであり、かつ、造成完了後白浜町に無償で譲渡することが宅地造成の条件として義務付けられており、それまでは事業者が自己の負担で、これらの施設を維持管理しなければならず、その費用を他に転嫁することはできないのに、原告らを欺いて管理契約を締結させたと主張する。

(二)  確かに、白浜緑光台の宅地造成に関しては、当初計画を遂行していた東新不動産と白浜町との間の協定において、緑地・公園、道路、給水装置施設について、東新不動産の負担で施設を設置し、完成後は白浜町の指示するところにより無償譲渡することが条件とされ、東新不動産は右条件を異議なく承諾し、各施設についての無償譲渡の時期もそれぞれに予定されていたこと(<書証番号略>)、そして、白浜町の「宅地造成事業に関する指導要綱」(<書証番号略>)によれば、「事業者は、公共施設等を町の管理または譲渡するまでは自己の負担において善良に維持管理しなければならない。」(五条二項)と定められていることが認められる。そして、東新不動産から白浜緑光台の宅地造成事業を引き継いだ被告伊藤忠が白浜町との右協定を承継していることも明らかである。

しかし、右指導要綱は、移管されるまでの間の公共施設等の維持管理責任が町にあるわけではなく、移管が実現するまでは事業者側において維持管理(費用の負担を含む)をしなければならないことを定めたにすぎず、右の間、事業者がその負担と責任において維持管理をするにあたり、その負担した費用を造成地の購入者等に転嫁することを許さないことまでを定めたものと解すべき合理的な理由はない(もっとも、負担を転嫁された購入者等がその支払をしないからといって、事業者の責任がなくなるわけではないから、その意味では、最終的に事業者が管理の費用を負担する義務があることは当然である)。原告服部も、宅地造成にあたって、地方自治体は期限を限定して引取り時期を示しており、事業者は、その期間分の維持管理費を造成経費に加算して販売していると供述しているように、移管が予定された公共施設等の維持管理費は、造成地の購入者が実質的に負担するのが通常であり、これを販売価格の中に折り込むか、別途管理費等の名目で徴収するかは、方法の違いにすぎない。

したがって、事業者が購入者との合意によって管理契約を締結し、移管までの公共施設等の維持管理の費用を購入者に転嫁することは何ら違法ではなく、被告らが原告らを欺罔したことにはならない。

(三)  なお、原告らは、これらの公共施設等は土地所有者に総有的に帰属するとして、これも管理費徴収を妨げる根拠として主張しているところ、仮に、事業者内部の計算上、これらの施設の設置にかかる費用の全部又は一部が、販売価格の内訳として含まれているとしても、そのゆえに当然に所有権も造成地の区画を購入した者に移転するものと考えなければならない理由はない。道路敷を販売区画に含めて、いわゆる「私道負担あり」として売買するか、これを白浜緑光台のように事業者に保留して、「私道負担なし」として売買(<書証番号略>)するかは、当事者双方の契約によって決定される事柄である。のみならず、いずれにせよ、道路等の維持管理は、所有権の帰属とは別個の問題であって、事業者と購入者との間で、これをどのような方法で行い、その費用をどのように負担するかも、当事者双方の契約によって決定される事柄である。

したがって、白浜緑光台の公共施設等が被告伊藤忠の所有に属さないことを前提にする主張も理由がなく、この点でも、原告らと管理契約を締結したことが欺罔行為にあたらないことは明らかである。

(四) よって、管理契約締結にあたって被告らに欺罔行為があり、同契約の承諾の意思表示は詐欺によるものであるとの原告らの主張は理由がない。

2  管理契約締結にあたっての錯誤の有無

原告らは、公共施設等の管理費を造成地の所有者が負担する義務はない(移管前の管理費は事業者が自ら負担しなければならない)との前記主張を前提として、管理契約の締結に錯誤があると主張するが、前述のとおり、移管前の公共施設等について、宅地造成事業者である被告伊藤忠が造成地の購入者と管理契約を締結し、その維持管理費の負担を求めることができないわけではないから、錯誤の主張は前提を欠き失当である。

3  管理契約の公序良俗違反の有無

原告らは右と同様の前提のもとに、管理契約の締結が公序良俗に違反すると主張するが、その理由がないことは右と同様である。

4  管理契約上の債務不履行の有無

(一) 報告義務

(1) 報告時期

管理契約によれば、施設負担金については、二年目毎(偶数年次の四月末日まで)に同年三月末日までの二年間の負担金取崩状況について使途明細書を添えて土地所有者に報告するものとされている(管理契約五条四号)ところ、証拠(<書証番号略>)によれば、報告年度と報告日の関係は次のとおりである。

(報告年月日)(報告年度)

① 昭和五五年一〇月 昭和五二・五三・五四年度

② 昭和五八年四月 昭和五五・五六・五七年度

③ 昭和六〇年四月二三日 昭和五八・五九年度

④ 昭和六二年四月二四日 昭和六〇・六一年度

⑤ 平成元年四月二六日 昭和六二・六三年度

これを見るに、右①②の報告時期が約定と異なることは明らかである。しかし、最初の報告(昭和五二・五三年度分)をしなかったのは、販売完了区画数も少なく、施設負担金の取り崩しもなかったことによるものであることが認められ(<書証番号略>)、昭和五七年四月にすべき報告が一年遅れた理由については明らかでないが、察するに、白浜緑光台の管理が被告ハウジングから被告管理会社に移行した時期であり、三年毎の報告と誤解したか、失念していたものと思われ、被告管理会社が設立され、白浜緑光台の管理を被告管理会社が引き継ぐことになった際、被告ら三社連名で、昭和五七年三月一八日付の「お知らせ」と題する書面(以下「引継ぎのお知らせ」という)を作成して、引継ぎの経過や管理会社の概要とともに施設負担金と温泉負担金の取り崩し後の残高だけは報告していることが認められる(<書証番号略>)。その後は二年毎の報告が励行されている。このような事情からすれば、右①②の報告時期が契約条項に違背するものであるにしても、全体としてみれば、その違背の程度は極めて軽微なものであり、原告らに特段の不利益を与えたものとは認め難い。

(2) 報告内容

原告らは、施設負担金に生じた利息の使途の報告がないと主張しているところ、各年度の報告内容は、概ね別表③(利息欄を除く)のとおりであり(<書証番号略>)、各年度に生じた利息額もその使途も記載されていないことが認められる。

被告管理会社が管理を始めた昭和五七年四月一日以降の各年度の施設負担金と温泉負担金の両者に対する利息の合計額については、同社の営業報告書において、損益計算書の受取利息科目に計上されており(<書証番号略>)、その額は、別表③の昭和五七年度以降の「利息」欄記載のとおりであり(累計額四九二八万九〇九〇円)、被告ハウジング管理当時の利息については、これを認定できる的確な資料はないが、各負担金の年度末残高が期首に存在したものとして、これに年六分の割合で利息を計算すると、別表③の昭和五六年度までの「利息」欄記載の額となり(累計額二二六二万九八一八円)、その総累計は七一九一万八九〇八円となる。

<書証番号略>(小梶茂証人調書)によれば、負担金の利息は、被告ハウジングが管理していた当時から通常の管理費用(人件費)に充当しており、被告管理会社は被告ハウジングから利息相当額の引継ぎは受けておらず、その後被告管理会社においても同様の取扱をしており、被告ら三社連名で作成された「引継ぎのお知らせ」には、「お預りしている負担金の運用により得られる金利は従来通り通常維持管理費に充当します。」との記載があることが認められる。

しかし、本来、負担金から生じた利息は、管理契約及び温泉契約上それぞれ定められた負担金の使途に使用されるべきものであり、施設負担金と温泉負担金の利息を合算して相互に流用したり、通常維持管理費に充当することは、契約に違背することになる。

二年毎の負担金の使途の報告に、発生した利息の額も記載せず、これを通常維持管理費に充当した旨も記載せず、ただ一度、「引継ぎのお知らせ」に注記しただけで、全所有者がその趣旨を理解し、これを承認したと見るのは安易に過ぎる。

負担金について報告を義務付けた趣旨は、その収支が公正に行われていることと使途が適正であることを担保するものであると考えられるし、前記のように負担金から生ずる利息は相当の高額にのぼるのであるから、契約遵守の必要性は大きいものといえ、その報告を怠り、明確な承認を得ることもなく、使用を許されていない使途に使用し続けてきたことは、管理契約上の債務を誠実に履行していないとして批判されてもやむをえないものがある。今後は、このような運用は改められるべきであるが、同様の運用を続ける必要性があるのであれば、各所有者の同意を得るか、少なくとも報告毎にその期間に生じた利息の額とその使途を明記すべきであろう。

(二) 腐敗水の供給

(1) 白浜緑光台の給水装置施設の設置の経過

証拠によれば、次の事実が認められる。

(イ) 東新不動産は、昭和四七年九月二七日、白浜町長に対し、次のような給水計画のもとに、白浜緑光台への町営水道の給水を依頼する「水道給水に関する願書」(<書証番号略>)を提出した。

(給水計画)

ⅰ 計画給水所数 二二四区画

ⅱ 計画給水人口 一一二〇人(一戸当たり五人として全区画数を乗じたもの)

(ロ) これに対し、白浜町長は、昭和四七年一〇月二四日、「宅地造成地内の配水管及び給水管敷設については、造成地内道路計画その他造成施設の計画に基づき町において実施設計を作成し工事を施工する。但し、工事費は事業者において一切を負担するとともにその施設については、完成後町の指示するところにより無償譲渡すること」等の条件を付して、給水することを承諾し(<書証番号略>)、東新不動産は、この条件を受諾した(<書証番号略>)。

(ハ) その後、東新不動産は、昭和五〇年四月二三日、白浜町に対し、給水装置工事の許可を申請し、白浜町は、同年一一月二九日、次の条件を付して、これを許可した(<書証番号略>)。

〔条件〕

① 子メーターの給水使用料は、子メーター設置者から徴収する(一項)。

② 給水装置施設(受水槽・高架水槽・配水池・配水管・給水管等)の無償譲渡の時期は、昭和五五年三月三一日とし、その方法は事業者の寄付申込書による(四項)。

③ 白浜町は、前項の申込みを受けたときは、その日から三〇日以内に当該施設の検査を行う。但し、検査に合格しないときは、事業者の負担により補修又は改造工事を行い再検査を受けること(五項)。

④ 当該施設の譲渡までの維持管理は、事業者の責任において行うこと(六項)。

⑤ 前項の管理について、技術上の業務を担当させる維持管理責任者を定め、町長の承認を受けること。なお、維持管理責任者は、水道法一九条三項に規程する資格を有するものとする(七項)。

(ニ) この結果、昭和五〇年一二月に白浜緑光台の給水装置施設が完成したが、同施設は、白浜町営水道から供給を受けた水道水を七八トンの受水槽に溜めてから二〇〇トンの高架水槽に汲み上げ、約3.7キロメートルの本管(口径一〇〇ミリメートル)及び約二キロメートルの支管で各戸に給水するシステムを採っている。

(2) 本件給水装置施設の性質

(イ) 原告らは、右のような給水装置施設の規模等から判断して、被告らは、水道法上の水道事業者であると主張するが、水道事業者とは、水道法六条による厚生大臣の認可を受けて水道事業を経営する者をいうところ、被告らがこのような認可を受けて水道事業を経営するものでないことは明らかである。

(ロ) 次に原告らは、白浜緑光台の水道施設は、専用水道に該当すると主張するところ、水道法三条六項によれば、「専用水道」とは、「寄宿舎、社宅、療養所等における自家用の水道その他水道事業の用に供する水道以外の水道であって、百人をこえる者にその居住に必要な水を供給するものをいう。」とされており、右規定は、常時一〇〇人を超える居住者(継続的に日常生活を営む者であり、滞在者を含まない)に対して給水することをその要件としているものと解されるが、白浜緑光台は、二九〇区画が完売されているものの、建物が建築されている区画は、現在一三七区画(水道問題が生じた昭和六〇年当時は一〇〇戸程度)であり、そのうち定住者は一五戸に過ぎないことが認められ(証人佐々木弘)、定住者の家族数は明らかでないが、各戸五名としても七五名であり、右要件に達せず、したがって、専用水道に該当するものとは認められない。

(ハ) 従前、このようにマンションや住宅団地等で水道事業者から給水を受けて受水槽に溜めて高架水槽に汲み上げで貯水したうえで各戸に給水する方式を採っている場合、居住者が一〇〇人を超えない場合には、専用水道に該当しないことから水道法の規制が及ばず、受水槽以下の水道の管理が適切に行われず、水質管理に問題を生ずることが多くなったことから、昭和五二年に水道法が改正され(昭和五二年法律第七三号)、簡易専用水道の規定を設け、水道の管理及び検査について、厚生省令による規制を受けることになった(簡易専用水道に係る部分については、昭和五三年六月二三日から施行された)。

右改正後の水道法三条七項によれば、「簡易専用水道」とは、「水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であって、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。ただし、その用に供する施設の規模が政令で定める基準以下のものを除く。」と定義され、水道法施行令一条の二によれば、右除外基準は、水道事業の用に供する水道から水の供給を受けるために設けられる水槽の有効容量の合計が二〇立方メートルと定められている。

したがって、白浜緑光台の受水槽以下の給水装置施設は、簡易専用水道に該当する。

そして、改正水道法は、簡易専用水道の設置者(本件の場合は、被告伊藤忠)は、厚生省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならないと規定し(三四条の二第一項)、同法施行規則は、その基準を次のとおり定めている(二三条)。

① 水槽の掃除を一年以内ごとに一回、定期に行うこと。

② 水槽の点検等有害物、汚水等によって水が汚染されるのを防止するために必要な措置を講ずること

③ 給水せんにおける水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水質基準に関する省令の表の中欄に掲げる事項のうち必要なものについて検査を行うこと。

④ 供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知ったときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講ずること。

また、改正水道法は、当該簡易専用水道の管理について、その設置者は、厚生省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生大臣の指定する者の検査を受けなければならないものとし(三四条の二第二項)、これに違反した場合の罰則(一〇万円以下の罰金)も定めており、水道法施行規則は、「定期」とは「一年以内ごとに一回」と規定している(二四条)。

(3) 水道問題の発生から移管完了までの経過

証拠(<書証番号略>、証人斉藤啓介、同佐々木弘、原告服部良雄)によれば、白浜緑光台の水道の水質が問題となり、最終的に給水方法が変更されるまで、次のような経過で進行したことが認められる。

(イ) 被告らは、簡易専用水道であるとの認識がなく、白浜町営水道であるから、白浜町に水質管理の責任があるとの理解のもとに、給水施設の維持管理責任者も置かず、同施設を設置した昭和五〇年以来全く水槽の清掃をしたこともなく、水質の検査もしてこなかった。

そのうえ、白浜町も給水開始段階で施設の適否を検査しただけで、その後は、施設の移管まで事業者が管理することになっているとして、町として何らの指示もせず、自ら管理することもなかった。

(ロ) 昭和六〇年四月に白浜緑光台に定住するようになった原告服部は、水道水に問題があるのではないかと感じ、他にも水道水が臭いとの苦情の声が方々から上がっていたこともあり、同年七月二六日、被告管理会社の担当者等に水道水について即時検査するように申し入れたが、速やかに実施されなかったので、同年八月九日、白浜町水道部に指導を申し入れ、同日午後一時半ころ、同部検査官が測定機器を持って現地に赴き、蛇口から出る水について検査したところ、水質基準上0.1PPM以上なければならない残留塩素が全く検出されず、五か所の管末で放水を続けた結果、午後五時ころになってようやく基準値を回復した。

町水道部は、引き続いて、同月一二日まで、毎日放水するように大末サービスに指示し、同月一二日にも残留塩素値を検査したところ、放水前は0.06ないし0.008PPMしか出ず、放水後にやっと0.25PPMに回復した。

(ハ) 八月中は、別荘地が賑わうため、断水することができなかったが、被告管理会社は、昭和六〇年九月二日に水道本管洗浄工事、同月七日に受水槽及び高架水槽の消毒洗浄工事を実施し、株式会社環境水質研究所に依頼して、厚生省令に基づく端末水の水質検査を行ったところ、残留塩素が0.15PPM検出されたほか、臭気・味・PH値・濁度・色度・一般細菌・大腸菌群等のいずれの検査も基準内であるとの結果が出て、同年一〇月一五日付で被告管理会社から土地所有者にその旨の報告もなされた。

(ニ) しかし、昭和六〇年九月一九日の測定でも残留塩素は検出されず、放水によりようやく基準値を回復するような状況であり、白浜町水道部は、水道水が水槽内に滞留していることが原因と判断し、水槽の清掃等のほか、水槽の水位調整や塩素注入装置の設置を指示し、いずれも実施されたが、一年後の昭和六一年九月二四日に至り、水槽容量に比べ使用水量が少ないため水道水が滞留し、水質の悪化原因になっており、受水槽及び高架水槽を使用していては良質の水を供給することは困難と判断して、被告管理会社に対し、行政指導として、従来の給水方法を改めて、町水道直送方式に切り換えることを指示した。

(ホ) 被告管理会社は、昭和六一年一〇月三一日、右行政指導の受入れを決定し、同年一一月から一二月末までにそのための施設改良工事を施工し、完了後の昭和六二年一月八日、水質検査を受け、水質基準に適合していることが確認された。

(ヘ) 右行政指導の際、白浜町は、施設改良後一年の経過を見て町水道としての引取りの基準に合えば引取りの対象として検討することを約しており、昭和六二年一一月一九日に水道施設移管に伴う検査を実施し、一部改善を指示し、その補修工事が完了した後の昭和六三年八月五日、完了検査に合格し、同月二四日、既に移管されていた高架水槽用地等以外の水道施設全体が白浜町に移管された。なお、その際、受水槽・ポンプ設備・高架水槽は、将来、水道使用量が増加した場合は、直送方式では、白浜町の水量が不足する事態が生ずるおそれがあり、その場合に備えてこれらの設備は現状のまま保存することとされた。

(4) 被告らの債務不履行

以上のとおり、被告伊藤忠は、東新不動産が白浜町と合意していた給水装置工事許可条件を引き継いでいるにもかかわらず、右許可の条件とされていた給水装置施設移管までの維持管理について、水道法一九条三項に規定する資格を有する維持管理責任者を置かなかっただけでなく、昭和五三年六月以降は、水道法の改正による簡易専用水道の設置者として、水道法(同法施行令及び施行規則)の各規定に従って、白浜緑光台の給水装置施設を管理し、毎年定期検査を受けなければならないのに、これらの義務をいずれも怠り、一〇年間にわたり、一度も水質検査を実施せず、水槽の掃除も行わなかったものである。定期検査受検義務違反は、前記のとおり刑罰にも触れる重大事である。同様に被告伊藤忠から管理を委託されていた被告ハウジングも、昭和五七年四月一日から管理業務を担当することになった被告管理会社も、これらの義務を怠り続けてきたものである。

被告らは、白浜緑光台の水道給水は町営水道によるものであるから水槽等の管理義務がないと主張するが、大規模な宅地造成事業を営むものとして、水道法の改正を知らなかったとの弁解は許されるものではなく、水道は、現実に被害が生じたか否かにかかわらず、住民の生命身体の安全に重大な影響を及ぼすものであることはいうまでもないから、法規に定められた管理及び検査が全くなされていなかったことは、管理契約上の重大な債務不履行といわなければならない。

原告らは、町水道直送方式に切り換えられるまでの水は腐敗していたと主張するところ、白浜町水道部次長の斉藤証人は、「放水後、残留塩素が出て、水質検査結果も『飲料適』であったことからみて、腐敗していたかの判断は迷う。」と述べているが、基準値を超える残留塩素が検出されたり、水質検査が行われたのは、長時間の放水を繰り返した後のことであるからして、「腐敗」の定義は明らかではないものの、放水前の水が「飲用適」であった保証はなく、水質基準に適合しない水であったことは明らかである。なお、原告らは、強力な発癌物質であるトリハロメタンが発生していたと主張するが、この点については認めるに足りる証拠はない。

(三) 現地管理の不備

原告らは、被告らによる現地管理が行き届いていないと主張するところ、証拠(<書証番号略>、証人佐々木弘)によれば、白浜緑光台の現地管理については、被告ハウジングの管理当時も被告管理会社に移行した後も、大末サービスに委託して行われていたものであり、昭和六一年三月までは、大末サービスの嘱託社員が現地の管理事務所に通勤し、午前九時ないし一〇時ころから夕方まで別荘地内を巡回し、必要な現地管理業務を担当していたが、その不在時に土地所有者らが別荘地に到着した場合や緊急の場合の連絡体制が整っていないなど、利用者から不満を寄せられていたことから、昭和六一年四月以降は、住込管理員(夫婦)に勤務させる体制に変更し、常に管理事務所に管理員がいる状態が整えられたことが認められる。

原告らは、このような管理体制の変更があった後も十分な現地管理が行われていないと主張し、原告服部は、本人尋問及び陳述書(<書証番号略>)において、二〇トンもの落石が数年にわたって放置してあったとか、野犬が横行しているとか、道路が荒れ放題であるなどと述べているが、時期や場所等の具体性もなく、写真等客観的に管理の不備を証明する証拠資料も提出されていない。また、原告兼原告ら(一部)代理人の後藤弁護士は、原告らの苦情を集約した形で、被告らに対し「管理状況についての要望書」(昭和六二年六月)(<書証番号略>)や「緑光台に関する通告書」(同年八月)(<書証番号略>)を提出して、白浜緑光台の管理に関して多くの要望や釈明を求めているが、この中でも特に現地管理に対する指摘はなされていない。

そうすると、常駐体制が整うまでは、管理員が一人で勤務時間も短かったこともあり、管理が行き届いていなかったとしても、右要望書等を提出した時点では概ね改善されていたものと推認するのが相当であり、少なくとも管理員(夫婦)の常駐後は、管理契約上の債務不履行を問題にする程度の管理の不備があったとは認められない。

(四) 負担金等の目的外使用

(1) 上水道施設改善費用

被告管理会社は、前記のとおり、白浜緑光台の開発時に設けた給水装置施設(以下「旧施設」という)を町水道直送方式(以下「新方式」という)に切り換え、そのための費用として六二一万円を施設負担金から支出しているところ、原告らは、このような切換え工事をしなければならなくなったのは、旧施設に構造的欠陥があったためであるから、その改善費用は被告伊藤忠が負担すべきであると主張する。

確かに、旧施設は、販売予定区画の全て(当時は二二四区画)に五人の家族が居住するとして計画給水人口を想定し、これに見合った最大使用量を供給できる施設として設けられたものであるが、白浜緑光台は、販売から一八年も経過した現在でさえ、建築戸数一三七戸、定住者一五戸に過ぎないから、現状は右想定と著しくかけ離れており、その結果、貯水槽内に長期間水道水が滞留することとなり、これも原因となって水質を悪化させたものであって、別荘地であることからこのような結果はある程度予測可能であったとみられることからすれば、旧施設設計の妥当性が一応問題となろう。

しかし、給水施設は、全ての区画に居住することを想定し、これに見合った時間最大使用水量を計算して計画されるものであり、給水人口が計画どおりになった場合に旧施設がなければ白浜町の必要水量が不足する事態を招来するおそれがあり、時々の給水人口数にかかわらず、全区画に給水できるだけの施設が設置されていなければ、そのような給水装置施設を行政移管することも叶わないと推測されるから、旧施設の設計自体に過誤があったとか、これが無用の施設であったということはできない(証人斉藤啓介)。もっとも、このような事情で右最大使用水量を賄える施設を設けるにしても、別荘地の特殊性を考慮すれば、給水人口が極度に少ない場合等に対応できる設備や給水方式をも併せて検討することが必要であったと考えられ、その点での配慮が足りなかったとはいえよう。そして、給水人口が少ない場合の対応としては、水槽の水位調整ができる設備を設けるとか、小型の高架水槽を併設するなどの措置もその一つとして考えられるが、どの程度効果があるか疑問もあり、町水道を直接供給できる新方式がもっともよいことは明らかであるから、白浜緑光台の居住人口の状況から見て、両施設を併設することにしたのはやむを得なかったというべきである。

そうすると、新方式に切り換えるための工事は、上水道施設の改良にあたり、施設負担金の使途として定められたものに該当すると認めるのが相当であり、目的外支出とする原告らの主張は採用できない(管理契約三条・五条)。

(2) 道路移管の際の補修費

被告管理会社は、白浜緑光台の公衆用道路二万八三九四平方メートル(六メートル道路2.7キロメートル、五メートル道路1.4キロメートル、四メートル道路1.2キロメートル)を昭和六三年八月二四日に白浜町に譲渡しているが、その際の道路補修等の費用に二六四四万円を要し、これを施設負担金から支出しているところ、原告らは、これを不当支出であると主張し、その理由として、(イ)造成時に未完成部分があったこと、(ロ)管理不十分のために多数の損壊箇所があったこと、あるいは、使用頻度が極めて少ないことからすれば、損壊箇所の大半は道路工事の欠陥に基づくものであること、(ハ)早期に移管しなかったために補修費が過大になったことなどを挙げるので、順次検討する。

(イ) 証拠(<書証番号略>)によれば、白浜緑光台の宅地造成に関する工事について、昭和五〇年三月二九日に和歌山県が宅地造成等規制法九条一項に基づいて完了検査を行い、同法の技術基準及び和歌山県工事検査技術基準に適合するものと判定され、同年五月一日付で同法一二条二項により宅地造成工事検査済証が交付されていることが認められ、道路が右検査の対象となっていることは当然であり、少なくともこの時点で同法の技術基準を達成しないような未完成部分があったとは認められない。

原告らの主張は、移管時の補修内容として、カーブミラー(五箇所)やガードレール(四箇所)が設置され、幹線道路中央ラインが引かれている(被告管理会社他一名平成四年一二月八日付準備書面添付「施設負担金の各期使途金額明細表No.7参照―以下「明細表」という)ことをもって、道路として未完成であったとするもののようであるが、このような附帯工事がされたのは、造成完了検査時と移管時点での検査基準や安全基準等の変化や、道路の譲渡を受けて今後管理義務を負担することになる町側の要望もあってのことであり(証人佐々木弘)、道路として未完成であったことを直ちに示すものではない。

(ロ) 原告らは、道路管理の不十分を主張するところ、「明細表」によれば、舗装・補強側溝補修箇所が一〇八箇所あったことが窺え、これまで道路関係の補修は、昭和五七年度(一八万八〇〇〇円)と昭和六〇年度(三五万円)の二度しか行われておらず(別表③)、十分な補修工事がなされていなかったといえなくもないが、移管を受ける側は今後の維持管理のため財政的負担を強いられる立場にあり、移管時には日常的管理レベルに比べ相当高度な検査基準を設定していることは容易に推察されるところである。したがって、多数の補修箇所を指摘されたからといって、直ちに道路管理に手落ちがあったとまではいえないし、仮に以前に補修しておくのが相当とされる部分があったとしても、その補修費用は負担金から支出せざるをえないのであるから、早期に補修しなかったことにより損害が拡大されたなどの事情がない限り、その補修費の支出が不当になると解することはできない。しかるところ、原告らから具体的にそのような指摘もなく、もとよりその立証もない。

また、原告らは、右のような多数の補修を要求されたのは、道路工事自体に欠陥があったからであるとも主張するが、前記のような移管を受ける側の事情も影響していることが考えられるのであって、原告らの主張は、欠陥の内容も具体的に特定されているわけでもなく、推測の域にとどまる。

(ハ) 原告らは、被告らが道路等の公共施設等の早期移管を怠ったと主張するが、公共施設等の移管については、白浜緑光台の開発当初から白浜町との間に合意が存在し(<書証番号略>)、被告管理会社は、原告服部らが問題を提起する以前の昭和五七年九月三〇日に白浜町長に陳情書(<書証番号略>)を提出し、建築戸数も九〇戸に達し、今後も年間一五ないし二〇棟の建築が見込まれるとして、道路等の早期移管を陳情しているのであり、白浜町が、建築戸数が五〇パーセント程度にならなければ移管は受け入れられないとの立場を堅持していたため、当初目標としていた五年程度での移管が実現せず、ようやく造成から一三年後の昭和六三年八月に移管が実現したものであり、特に被告らが早期移管を怠っていたと認めるに足りる証拠はない。そして、白浜町が移管の受入れの条件としてこのような基準を示したのは、財政的負担をしなければならない行政当局として、税収との調和点を図るうえでやむを得ないものというべきである。

なお、白浜地区の別荘地における公共施設等の移管状況をみると、一三年ないし一六年で移管が実現した別荘地(「サニービーチ」、「オレンジランドⅠ」)もあるが、二〇年を経過しても未だ移管されていない別荘地(「バラード白浜」、「南紀白浜台Ⅰ・Ⅱ」、「黒潮台」)もあり(<書証番号略>)、白浜緑光台は最も早く移管が完了した別荘地の一つであることが認められる。

以上の次第であるから、道路移管の際の補修費を施設負担金から支出したことは、管理契約上許された行為と認められ、原告らの主張は理由がない。

(3) 遊歩道等の管理費用

原告らは、遊歩道を無用の施設であるかのような主張をし、残すとしても関係土地所有者に譲渡して、その管理に委ねるべきであるというが、販売当初の白浜緑光台のパンフレット(<書証番号略>)にも、「随所に設けた遊歩道」として、別荘地の一つの施設として宣伝もされているのであって、別荘地の利用者が自由に散策することのできる施設であるから、これを関係土地所有者に譲渡し、管理責任を負わせることは、その趣旨に反するものとなろう。また、別荘地の有り方に対する発想は人により異なるものであろうから、原告らの考え方が一つの合理的なものであるとしても、土地所有者全体の意見とみることはできない。以上のとおり、原告らの主張は根拠のないものであり、遊歩道の維持管理のために施設負担金を使用することは管理契約上許された行為である。

(4) 公園新設・運動広場新設費用

(イ)  被告管理会社は、土地所有者の要望もあり、別荘地として優良・健全な環境を保持するために必要と判断して、被告伊藤忠が保有していた未販売の六区画を無償で譲り受け、昭和五七年度に第一期として八八万円をかけて整備し、昭和五八年度には第二期として三二万円で整備工事をし、二箇所に公園を設けたが、昭和六一年度に集中降雨により東緑地法面に亀裂が入ったため、三〇〇万円を投じて補修工事を施工し、また、土地所有者の一部からスポーツ施設設置の要望を受けたことから、白浜町と交渉し、その所有する運動広場の無償貸与を受け、運動公園として整備することとし、昭和五九年度に施設負担金から二一五万七〇〇〇円を支出して、テニスコート等の運動広場を設けたことが認められる(<書証番号略>、証人佐々木弘)。

(ロ)  ところで、被告管理会社は、原告らと個々に管理契約を締結して、白浜緑光台の管理業務を担当しているものであり、契約上、管理対象施設を特定し、その修理等に負担金の使途を限定しているのであるから、管理会社が独自の判断で施設負担金を使用して新たな施設を新設することは、原則として許されないものというべきである。

被告らは、管理契約が管理対象施設を列記した中に「その他分譲地内の公共の用に供する施設」も挙げられており(三条六項)、その維持管理も管理業務とされている(四条五項)だけでなく、管理者において必要と認める事項も管理業務として行える(同条七項)旨の規定があることから、別荘地としての環境を充実させ、その価値を高める施設を設置し、その管理をすることができると主張しているが、右規定が新たな施設を設けることまで包括的に委任していると解することは困難である。

(ハ)  被告らは、所有者が点在し、かつ、常住していない別荘地の特性から、その総意に基づく管理は事実上困難であると主張しているところ、マンションや住宅地と異なり、区分所有者の管理組合を結成したり、全体の意思を反映できるような自治的団体を結成することが困難なことは十分理解できるにしても、被告管理会社は、毎年管理費を徴収し、二年毎に負担金の使用状況を報告し、被告管理会社を設立して管理体制が変わったとき(<書証番号略>)や、管理費の値上げを要請する場合(<書証番号略>)など必要に応じて、所有者全員に通知をしたり、承認を求めているのであるから、新設施設について、予算を示し、設置することの承認を得ることは不可能なことではない。別荘地をどのような環境で維持し、発展させていくかは、特別の定めがない限り本来は所有者が決定すべきことであり、そのための原資が所有者に由来するときはなおさらであるから、被告らの主張は、所有者から管理を委託されている立場を忘れ、自らの判断を優先させるものとして非難を免れまい。

もっとも、全員の意見が一致しなければならないものとすれば、そのようなことは不可能となり、時代に即応した良好な環境作りも出来なくなり、かえって全体の利益に反する結果となるから、多数の意見に従って判断することが許されるというべきであろう。

しかるところ、被告管理会社は、これらの施設を新設するにあたって、一部の所有者の要望を受けていたことはあっても、事前に所有者に周知させることもその了解を得る措置もとっていないのであって、この点で管理契約に反するといわざるを得ない。

(ニ)  しかし、被告管理会社は、事後的ではあるが、これらの施設を設けたこと及び施設負担金から支出した額について、各年度の負担金収支報告(<書証番号略>)において全所有者に報告をしており、原告らを除く所有者からこれに対し異議が述べられたような形跡はないから、多数の所有者の暗黙の承認は得られているものと認めるのが相当であり、かつ、原告らは反対しているが、一般的には、前記施設は別荘地の施設として有益なものであり、被告管理会社が被告伊藤忠から六区画の土地を無償で譲り受けたり、白浜町の所有地を無償で借り受けたりして、所有者の負担の少ない方法でこれら別荘地としての価値を高める施設を設けたことは、手続的にはともかく、目的や結果において評価できるものである。

(ホ)  したがって、公園及び運動広場の新設並びにその維持管理のために施設負担金を支出したことは必ずしも不当とはいえない。

(5) プール補修費用

白浜緑光台のプールは、被告伊藤忠の負担で設置することになり、同被告が大末建設株式会社に一括発注し、昭和五三年一〇月に完成し、昭和五四年の夏から別荘地利用者に開放され、昭和五七年四月一日以降は被告管理会社に所有権が移転され、同被告が維持管理してきたものであるところ、昭和五七年六月、プール清掃中に水位が低下する事故が発生し、夏の開場に向け、大末建設が一五九九万五〇〇〇円を投じて改修工事を施工した。

大末建設は、右事故原因について、夜間注水中のホースが跳ね上がり、その水がプール側面及び底部に流入したため、水圧と土圧の均衡が崩れたためであるとして、その改修代金を請求したが、プール本体の構造上の欠陥ないし設計ミスであるとする被告伊藤忠及び被告管理会社の主張と対立し、改修工事代金の支払がなされない状態が続いた。

そこで三社間で協議をした結果、破損原因の解明が困難であり、不可抗力的な要素も強いとの判断のもとに、被告管理会社が五〇〇万円を負担することとし(残りは被告伊藤忠と大末建設の負担)、和解書(<書証番号略>)を作成して紛争に終止符を打ち、右五〇〇万円は施設負担金から支出されたことが認められる(<書証番号略>、証人佐々木弘)。

原告らは、補修工事の施工自体を否定し、原告服部はその旨述べているが、同人が白浜緑光台に居住する以前の出来事であり、確たる裏付けのある供述ではなく、採用できない。

なお、原告らは、プールのような施設は利用者負担が原則であり、施設負担金から維持費を支出するのは不当であると主張する。そのような考え方もあろうが、プールが存在することが別荘地としての価値を高めている面も否定できないし、プールの補修に五〇〇万円を施設負担金から使用したことは、全所有者に報告されており(<書証番号略>)、原告ら以外にこれに異を唱えるものがいるような形跡もないのであって、これも必ずしも不当支出とは認め難い。

(五) 管理契約の解除の可否

(1)  原告らは、被告らの債務不履行を理由に管理契約を解除すると主張しているところ、白浜緑光台土地売買契約(<書証番号略>)によれば、「白浜緑光台内各分譲区画、公園、緑地、浄化槽等の維持管理については別に定める『白浜緑光台管理契約』を締結するものとし、買主はこの契約に定める全ての条項を承認し、諸施設維持管理負担金、施設維持管理費を支払うものとします。」(一九条)と規定され、管理契約(<書証番号略>)によれば、管理契約の有効期間は分譲地内に土地を所有する間存続するものとされ(二八条)、また、「土地所有者が本分譲地及び建物を第三者に譲渡した場合は、譲受人に本契約を承継させるものとする。」(一二条一項)と定められている。

右規定からすれば、白浜緑光台の分譲地の所有と管理契約は一体不可分のものであり、管理契約のみを解除することは予定されていないものというべきである。

(2)  実質的に考えても、管理契約により管理の対象とされる施設は、公共施設等が移管された後に限ってみても、土地所有者全員が共同使用する集中汚水処理施設、街路灯、街路樹、緑地、公園、運動場、プール、遊歩道、管理事務所等であって、後記のような具体的な管理業務の内容に照らしても、個々の所有者が管理契約を解除したからといって、その限度で管理を止めることができるものではなく、個別の解除を認めれば、契約を締結している者のみが管理費を負担し、その利益は全体で受けることになり、公平を失することは明らかである。

(3)  もっとも、土地を所有する限り、どのような事情が生じても管理契約を解除することができないものとすれば、管理者が誠実に管理業務を遂行せず、管理契約を締結した目的を達することができないような場合にも、管理者を変更することができず、不適格な管理者に管理費を支払い続けなければならないような不当な事態が生じることも想定されなくはない。

したがって、管理者が管理業務を全く放擲したり、管理契約の目的を達成することができないような特段の事情がある場合には、個別に管理契約を解除することができることもあろうし、そのような特段の事情がない場合にも、共有物の管理の法理を類推して、土地所有者の過半数など多数の意思により、団体的に管理契約を解除・変更できることもあると考えられる。

(4)  しかるところ、原告らの主張する事実のうち最も重大な債務不履行は、給水装置施設の管理及び検査について、法令に違反する過誤があった点であり、このような状態が継続し、改められなければ、管理契約の個別的な解除の検討もしなければならないが、前記のとおり、給水は白浜町水道の直送方式に切り換えられ、旧施設も既に白浜町に移管されたことにより、問題は解決されている。そのほかの事実(報告を遅滞したこと、負担金の利息の報告がなかったこと、管理員が一人の当時の現地管理の不備)はいずれも、軽微なものであり、かつ概ね改善されている。

このような状況からすれば、かつて契約の本旨に従った管理業務がなされていなかった事実が一部にあったとはいえ、現時点で原告らのみの個別的な管理契約の解除を認めなければならないような特段の事情があるとまではいえない。

また、土地所有者の過半数が被告管理会社との管理契約の解除を求めていると認めるに足りる証拠もない。

(5)  したがって、債務不履行によって原告らが被った損害についての賠償請求はともかくとして、管理契約を解除することはできない。

5  事情変更による管理契約の解除の可否

(一) 原告らは、当初の管理契約に定められた管理対象施設のうち、集中汚水処理施設以外の公共施設等はすべて白浜町に譲渡され、管理対象施設から除外され、管理契約締結後に設置されたプール、テニスコート、公園等は管理対象物件ではなく、集中汚水処理施設も近々白浜町の管理下に置かれる予定であるとして、事情変更を理由に管理契約を解除すると主張している(もっとも、当面は、集中汚水処理施設の管理費に相当すると原告らが思料する月額五〇〇円の支払は認めている)。

(二) 確かに、道路及び附帯施設、水道施設、緑地等が白浜町に譲渡され、同町において維持管理が行われるようになり、当初の管理契約上の管理対象施設がそれだけ減少したことは明らかである。

(三) ところで、被告管理会社が大末サービスに委託している現地管理業務及び被告ハウジングに委託している事務管理業務の内容は次のとおりである(<書証番号略>)。

〔現地管理業務〕

(1) 汚水処理諸施設等の維持管理に関する業務

(イ) 汚水処理諸施設全般の維持管理に関する業務

(ロ) 汚水処理施設の修理・補修・部品交換等に関する業務

(ハ) 浄化放流水の適正な水質の保持及び関係官庁への報告

(ニ) 汚水処理施設周辺の除草及び清掃

(ホ) 宅地内汚水桝の巡回点検及び土砂の流入防止処置

(ヘ) 家屋建築時、建築主との諸調整及び接続工事の指導監督

(2) プールに関する諸設備の維持業務

(イ) 夏期オープン中における適正な水質の保全

(ロ) プール敷地及びプール(ネットフェンス内)の除草・清掃並びに諸設備の整備

(ハ) プール利用者の安全監督

(3) 電気供給設備の維持管理業務

(イ) 汚水処理・街灯等に対する正常な電気供給に係る受電者としての業務

(ロ) 電柱等の異常防止点検業務

(4) 環境施設の保全業務及び白浜緑光台敷地内の整備業務

(イ) 遊歩道・樹木・池等の清掃・点検・保守並びに整備

(ロ) 公園・スポーツ広場及びゴミ置場等の清掃・点検・保守並びに整備

(5) 管理事務所における業務

(イ) 来客に対する業務

・相談及び苦情等の受付

・物品販売等のサービス提供

(ロ) 通常の業務

・入居者の台帳整備と状況把握

・別荘地内のパトロール(清掃・整備を含む」

・対官公署連絡業務

・業務日誌の実行

〔事務管理業務〕

(1) 白浜緑光台購入者との管理契約等の締結業務

(2) 管理費等の徴収業務

(3) 管理に関する予算案並びに決算案の作成及び収支状況に関する報告書の作成業務

(4) その他会計諸票の作成協力業務

(5) 管理計画案の作成及びその補助に関する業務

(四)  右各業務は、公共施設等が移管された後の平成元年四月に締結された管理業務委託契約に基づくものであり、多種多様な業務があり、それらの業務内容からすれば、道路や水道の施設が移管されたからといって、直ちにこれらの業務が半減するというようなものでないことは容易に推察されること(<書証番号略>、証人佐々木弘)に加え、公共施設等が移管されたかわりに、プール、テニスコート、公園等新たな管理対象施設も加わっており(これらを管理対象とすることの正当性については先に判断したとおりである)、昭和五八年四月に管理費を月額三五〇〇円から四〇〇〇円に増額して以来、人件費等諸物価が高騰しているのに、管理費を据え置いていること、決算の結果、わずかの利益しか生じていない状況にあること(<書証番号略>)等を総合的に勘案すれば、先に判断したような性格を持つ管理契約を解除できるような重大な事情の変更があったとはいい難い。

したがって、原告らのこの点の主張も採用に由ないものというほかはない。

なお、原告らは、汚水処理施設が近々白浜町に移管されるような主張もしているが、白浜町は、白浜緑光台については公共下水道事業の予定処理区域に含めておらず、その汚水処理施設について移管を受ける意向がないことは明らかである(<書証番号略>)。

二温泉契約について

1  「温泉」についての欺罔行為の有無

(一) 温泉法によれば、「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、温度(温泉源から採取されるときの温度)が摂氏二五度以上であり、同法の指定する物質のいずれか一つを有するものとされている(二条、別表)。

そして、白浜緑光台における温泉は、東新不動産の代表取締役畑地実が昭和四六年に和歌山県知事の許可を得て掘削したものであり(<書証番号略>)、昭和四七年に実施された中央温泉研究所の分析検定の結果、泉温33.0度(気温31.5度)で、性状は無色透明微硫化水素臭の指定物質を含む単純温泉(緩和低張性微温泉)で、揚湯量は一分間二〇〇リットルと認定され、浴用の適応症は、リウマチ性疾患、運動機能障害、神経麻痺、神経症、病後回復、疲労回復と判定された(以下「温泉分析検定書」という)(<書証番号略>)。

なお、昭和六三年に実施された和歌山県衛生公害研究センターの分析結果の要旨は次のとおりである(<書証番号略>)。

〔緑光台一号泉〕

湧出地 白浜町字瓜切二九二六番一八九

泉温 34.4度(気温18.0度)

湧出量 五三l/分(動力揚湯一〇馬力)

泉質 単純温泉(弱アルカリ性低張性温泉)

性状 無色透明・無臭・無味

適応症 浴用飲用共一般の適応症と同じ

禁忌症 浴用飲用共一般の禁忌症と同じ

〔緑光台二号泉〕

湧出地 白浜町字瓜切二九二六番一二〇

泉温 30.5度(気温18.5度)

湧出量 六九l/分(動力揚湯五馬力)

泉質 単純温泉(中性低張性低温泉)

性状 無色透明・無臭・微弱鉱味

適応症 浴用飲用共一般の適応症と同じ

禁忌症 浴用飲用性一般の禁忌症と同じ

(二) 白浜緑光台は、右のように白浜町字瓜切に二箇所の温泉源を持つ温泉付別荘地として開発され、全区画に給湯用の配管が巡らされており、温泉付別荘地として売り出され、土地売買契約書に付随する契約として温泉契約を締結するものとされているところ、開発当初は、汲み上げた温泉を貯水槽に蓄えて、これをボイラーで加熱して給湯する集中加熱方式を予定していたが、石油ショック等の影響で重油が高騰したうえに、当初販売実績が上がらなかったため、右のような給湯方法を維持しようとすると利用者に過大に負担がかかると判断し、一一区画を販売しただけの段階で、集中加熱方式を止め、汲み上げた温泉をそのまま各戸に給湯する方式に切り換えた。既販売の一一区画については、その旨の了承を得て契約内容を変更し、その後の購入者との間では、改められた白浜緑光台温泉供給契約書及び同温泉供給規程を内容とする温泉契約を締結し、購入者には「温泉分析検定書」の写も交付されていることが認められる(<書証番号略>、証人佐々木弘)。

(三) 原告らは、白浜緑光台の温泉は、温泉類似の含有物を含む地下水に過ぎないと主張するが、確たる根拠は示されておらず、かえって、前記認定のとおり、昭和四七年の検査でも昭和六三年の検査でも、温泉法に基づいた「温泉」と認定されており、原告らの右主張は採用できない。

(四) また、原告らは、販売段階の説明会で、二五度ないし三〇度を下らない温泉を供給する旨の説明があったと主張し、原告服部は、四〇度は下らないとの説明を受けたと述べているが(<書証番号略>)、泉温も記載された「温泉分析検定書」の写も交付され、加熱方式を採用していないことも温泉契約書に記載されているのであるから、原告服部の供述はいかにも不自然であり採用できず、他に各区画に給湯された時点での温度を保証するような説明がなされたことを認めるに足りる的確な証拠はない。

もっとも、温泉契約書等には、「源泉より汲み上げた温泉を何ら加熱することなくそのままの温度で給湯する。」と記載されており、右文言のみから判断すれば、汲み上げられた泉温のある温泉がそのまま給湯管を経て各区画に給湯される。したがって、ある程度の泉温のある温泉が給湯されると理解するのが通常であろう。ところが現実には、揚湯量も少なく、汲み上げた温泉を一二〇トンと六〇トンの水槽に貯えて一定量に達した後各区画に給湯しており、しかもその水槽には保温設備もなく、散発的にしか利用しない別荘地の特殊性をも考えれば、そもそも泉温を維持できる仕組みにはなっておらず、殆ど外気温と変わらない状態でしか給湯できないシステムである。したがって、温泉契約書等の記載は、購入者に誤解を与えるおそれがあり、表現において適切であるとはいえない。

しかし、管理事務所の側に温泉施設があり(<書証番号略>)、貯湯タンクが設けられていることは現地を見分すれば明らかであり、このタンクから各区画に給湯されることも容易に認識できる事柄であるうえ、道路や水道配管が五キロメートル以上にも及んでいることから明らかなように広大な別荘地であり、給湯過程で温度が低下することはたやすく予測できることである。昭和六〇年に原告服部らがこの問題を提起するまで一〇年にもわたって特段の紛争が生じた形跡が認められないことからも、概ねこのような状況を認識して購入されていたと推認するのが相当である。

しかも、もともと白浜緑光台の温泉は、温泉源から採取されるときの温度が三三度(気温31.5度)であり、直接給湯するシステムをとっても給湯過程の温度低下を考えれば、各戸で加熱しなければ温泉としての利用ができないことは明らかであるから、温泉契約書等に右のような記載がされており、かつ、給湯システムの説明がなかったとしても、これをもって欺罔行為とまでは認め難い

(五) さらに、原告らは、湧出量が足らず、加水しなければ需要者の必要量の給湯ができないと主張するが、現在稼働している二号泉の揚湯量は、一分間六九リットルであるから、一日九万九三六〇リットルとなり、一戸当たり一日五〇〇リットルを使用するとしても、一九八戸に給湯できるのであって、揚湯量の不足はないし、加水した事実についてはこれを認めるに足りる証拠はなく、右主張は根拠がない。

(六) 原告らは、白浜緑光台の温泉は、混入物が多く、濁っており、飲用に適さず、使用によりかえって健康を阻害し、温泉としての価値や効用がないとも主張するが、これを客観的に証明する資料は何ら提出されておらず、かつ、温泉自体の性状等は前記認定のとおりであるから、この点においても原告らの主張は採用しがたい。

(七) 以上のとおり、原告らの主張する「温泉」に関する欺罔行為はいずれも認められないから、詐欺による温泉契約の取消の主張は理由がない。

2  「温泉」についての錯誤の有無

原告らは、前記と同様の事実関係を前提に、白浜緑光台の温泉は「温泉」と称することのできないものであるから、温泉契約の要素に錯誤があったと主張するが、理由がないことは先に判示したとおりである。

3  「温泉」供給における債務不履行の有無

(一) 原告らは、泉温二五度ないし三〇度の温泉を供給することが温泉契約上の義務であることを前提として、被告らに債務不履行があると主張するが、そのような約束が認められないことは先に示したとおりである。

(二) 原告らのいう温泉使用によりかえって健康を阻害しているという主張は、前記のとおり温泉自体の性状としては認められないが、原告らは、右事実を債務不履行の一事由としても主張しているものと解されるので、以下、これを検討する。

温泉分析書別表(<書証番号略>)の浴用又は飲用上の注意書によれば、「温泉には老化現象が認められ、地中から湧出した直後の新鮮な温泉が最も効用があるといわれているが、それぞれの泉質に適する用い方をしなければかえって疾病に不利に働く場合がある。したがって、浴用又は飲用上の注意事項はおおむね次によることとし、特に飲用には新鮮な温泉を用いるとともに源泉及び飲泉施設について十分な公衆衛生上の配慮を行わせること」と記載されており、老化した温泉は健康に悪影響を及ぼすこともあることが窺われるところ、被告らは、昭和五〇年以来一八年の間にタンクの清掃を一度だけしかしておらず(証人佐々木弘)、各戸に給湯された温泉について検査した様子もないのであって、右のような注意を守っているとは到底いいがたく、管理面での不備は否定しきれない(飲用については、原告服部らに要求されて、各戸に給湯された温泉を飲用しないように注意し、飲用する場合は汲み上げたさらの温泉を供給することを連絡したことはある―原告服部)。被告らとしては、温泉の老化現象あるいは貯溜による悪影響がないか、管末での検査を実施し、タンクの清掃の要否も検討すべきであったと考えられる。

このように、被告らが適正な温泉を供給しているか疑問がなくはなく、温泉を使用すると却って水虫がひどくなったり、発疹が出たり、目が痛むなどとの原告らの主張が事実だとすれば、これが管末での温泉性状劣化の影響による可能性は否定できない。

しかし、温泉の性状は先に認定したとおり、特段の禁忌症等も認められないところ、原告らは、温泉に混入物が多く、濁っているというものの、給湯管の中に滞溜していた温泉を排出した後も異物混入や濁りがあるのか明らかでないだけでなく、管末での温泉の性状の化学的変化について何ら検討されておらず、「被害」状況についても具体性がなく、因果関係についてもこれを認めるに足りる的確な証明はなされていない。したがって、この点についても、管理面での不備から何らかの悪影響の存在が疑われるにとどまり、債務不履行があるとまでは断定できない。

(三) よって、債務不履行を理由とする温泉契約解除の主張も採用することはできない。

三原告らの損害等の請求(本訴)について

1  管理契約に基づく施設負担金及び管理費

原告らは、管理契約が詐欺により取り消され、錯誤又は公序良俗違反により無効であり、債務不履行又は事情変更により解除されたことを理由に、契約締結時に支払った施設負担金及びその後支払ってきた施設管理費の返還を求めているが、いずれも理由がないことは、以上に判示してきたことから明らかである。

2  温泉契約に基づく温泉負担金、量水器保証金及び設備費

(一) 原告らは、温泉契約についても、詐欺により取り消され、錯誤により無効であり、債務不履行により解除されたことを理由に、温泉負担金及び量水器保証金の返還を求めているが、前提事実が認められないことは、先に判断したとおりである。

(二) 原告らは、当初の温泉契約が昭和六三年三月三一日をもって終了した後、再契約を拒否しており、原告らと被告管理会社間においては、同年四月一日以降温泉契約は締結されていないところ、原告らは、温泉契約の期間満了による終了を原因としても温泉負担金及び量水器保証金の返還を求めているので、以下この点について検討する。

(1) 温泉負担金

(イ)  温泉契約によれば、温泉負担金は、昭和五三年四月一日から昭和六三年三月三一日までの期間につき二〇万円とし、契約時期に応じた日割計算により算出され、補修引当金として積み立てられ、温泉諸施設の修理等に使用するものとされているところ、右期間満了時に未使用の負担金をどのように処理するかについては特別の規定はない。

一定期間を限った補修引当金であることと、管理契約においては、理由の如何にかかわらず、施設負担金は返還しない旨の明文の規定があることからすれば、期間満了時の残額については、一旦清算すべきであるとの見解もあながち理由がないではない。

(ロ)  しかし、白浜緑光台は、温泉付別荘地として売り出され、買主が土地売買契約と同時に温泉契約を締結することにより、負担金及び使用料を支払って温泉の供給を受けることができるものとされており、温泉供給義務者(当初は被告ハウジング、昭和五七年四月一日以降は被告管理会社)は、天災・地変等により温泉が枯渇した場合など温泉供給規定三一条に規定する事由により給湯を終了する場合以外は、温泉を供給する義務があり、温泉契約の締結者がいる限り、温泉諸施設を維持管理していかなければならないだけでなく、当初の契約期間が満了した後にも再契約に応じられるようにその施設を維持していかなければなない義務がある。それのみでなく、原告らのように再契約をしなくても、後に再契約を希望することになった場合や、その所有者が変わり、新所有者が温泉の供給を希望する場合には、特段の事情がない限り温泉契約の締結を拒絶できないと考えられる。

そうすると、温泉諸施設の維持管理を継続していくことは、再契約をしなかった土地所有者にもいつでも温泉の供給を受け得る地位を付与していることになるのみならず、白浜緑光台を温泉付別荘地として保全していくことにより、間接的に利益を提供することにもなる。白浜緑光台の温泉諸施設の維持は右のような意味あいを持っているから、本件別荘地の売買契約と同時に購入者全員との間で温泉契約が締結され、現実に温泉を使用するか否かにかかわらず、温泉負担金の支払がなされたものと理解される。

このように解すれば、温泉負担金は、当初の契約期間内に現実に支出された補修費に充てられるだけでなく、温泉が枯渇する等して温泉供給義務がなくなるまで、再契約をすると否とにかかわらず、補修引当金として積み立てられ、温泉諸施設の修理費等に当てられるものであり、期間満了後、再契約をしなかった者に対しても、温泉の供給が中止されるまで精算する義務はないものと解するのが相当である。

(ハ)  また、このような施設は、年月の経過により老朽化が進行していくから、たまたま当初の契約期間中に修理等がなされなかったとしても、減価分に応じた損失が生じている蓋然性は大きく、再契約をしなかった者に補修引当金を返還することにすれば、再契約拒否者は右損失を負担しないですむのに対し、再契約者は、先に利用していた期間に老朽化した施設を再契約者の負担のみで修理等維持していかなければならないことになり、過大な負担を強いられることになる。現に、別表③によれば、当初の契約期間中の収入合計は五三〇八万八四二七円に対し、支出はわずか六八〇万〇八二一円に過ぎないが、再契約時以降の支出は平成三年度までで九四九万六六〇〇円になっている。

なお、温泉負担金は一年につき二万円にすぎず、施設の減価との対比からも不相当な額ではない。

これらの事情や途中契約者の負担金が日割で減額されることなどを併せ考えれば、温泉負担金は、当初の期間中の温泉諸施設の減価に応じるものとして支払われたともいえ、原則として精算義務はないものと解するのが相当である。

(ニ)  よって、期間満了による温泉契約の終了を理由とする温泉負担金の返還請求は理由がない。

(2) 量水器保証金

(イ) 温泉供給規程二六条によれば、土地所有者は受湯開始時に量水器保証金として三万円を管理者に預託するものとし、量水器の修理に要した費用は当該保証金から支払うものとし、保証金が三万円に満たないときは速やかに不足額を追加預託するものと定められている。

また、土地所有権とともに温泉使用権が第三者に譲渡された場合は、右保証金も第三者に受け継がれるものとされている。

右規程の趣旨からすれば、現実に給湯を受ける者に対し、その使用量を測定するために量水器を取り付け、その修理費に充当するものとして事前に三万円を預かっているものであると解されるから、温泉契約が終了した場合は、修理に使用された額を控除した残額は、当該預託者又はその受継者に返還するべきものと解される。

(ロ) 別表①の「量水器」欄の上段に三万円の記載のある原告らは、量水器保証金を支払ったと主張している原告であるところ、被告ら認否欄の下段に「×」印が付されていない原告らについては、当該原告らが量水器保証金三万円を支払ったことに争いがない。

被告らは、右原告らから預託を受けた三万円について、量水器取り付け工事代等を差し引いた残額が「量水器」欄の下段の金額であると主張するところ、被告管理会社の営業報告書(<書証番号略>)の貸借対照表の流動負債の部に「温泉メーター取付負担金」として各年度毎に適宜の会計処理がなされていることからすれば、被告らの主張事実(別表①下段)のとおりであると推認するのが相当であり、また、原告らも被告ら主張の残額について殊更これを争ってもいない。

そして、量水器保証金は、原告らのうち被告ハウジングが管理を担当していた当時に温泉の供給を開始した者については、被告ハウジングに預託していたところ、後にこれが被告管理会社に引き継がれており、それ以外は被告管理会社に直接預託しているのであるから、被告管理会社において右残額を原告らに返還する義務があるというべきである。

(ハ) 原告松下清次、同小林米一郎(区画番号三―一〇)、川邉数雄、佐々木温子、由上登については、量水器保証金を預託したことを認めるに足りる的確な証拠がない。

(三) 別表①の「設備費」欄の上段に金額の記載のある原告らは、温泉を加熱するための温水ボイラー等の設備をしたとして、温泉契約の債務不履行を理由に右設備費及び燃料費相当額の損害賠償を求めているが、原告らの主張するような蛇口での泉温を契約内容としたと認められないことは先に判断したとおりであるから、この点の債務不履行は認められない。

3  腐敗水の供給を理由とする損害金(水道代、治療費、運搬費及び慰謝料)

(一) 別表①の「水道代」「運搬費」「治療費」及び「慰謝料」欄に金額を記載している原告らは、給水されていた水道水が腐敗していたとして、一年間の水道料を一万〇二〇〇円(月額八五〇円)として給水期間に応じた水道料を債務不履行による損害と主張している。

そして、一部の原告らは、腐敗水であることが判明した昭和六〇年八月からこれが改善された昭和六二年一二月までの期間、飲料水を他所から自動車等で運搬しなければならなかったとして、滞在期間に応じて運搬費を請求している。

(二)  先に認定したとおり、被告らは、給水装置工事許可条件に定められた義務あるいは昭和五三年六月から実施された簡易専用水道の設置者又は管理受託者としての義務を怠り、水質基準に適合しない水を供給し続けていたものであり、これが管理契約上の義務違反となることはいうまでもない。原告らは、水道水に対して正規の水道料の支払をしてきたのであるから、右不適合により価値が低下していた限度で損害があったというべきである。

そこで、この点の損害について検討するに、長期間にわたって水道法に定められた貯水槽等の清掃が行われず、年に一回以上は受けなければならない地方公共団体による定期検査も受けていなかったのであるから、水道水としての品質が次第に低下していったことは容易に推測できるものの、具体的に水質がいつごろから、どの程度に悪化していたのかが判然としないし、水道使用量も明らかでない。しかし、このように損害が生じている蓋然性は高いのに、その立証が容易でないのは、被告らが本来なすべき水質の定期的な検査を怠っていたことや長期間にわたって次第に水質の劣る水道水が供給されていたため原告らに被害状況が明確に認識され難く、そのため証拠資料を収集したり保存できなかったことなども大きな原因というべきであり、このような場合、明確な立証がないからといって損害をすべて否定するのは相当でなく、概括的な立証の範囲で損害を認定することも許されるというべきである。

そして、建物の建築と同時に水道の供給が始まるのが通常であること、水道の使用量にかかわらず基本料金(昭和五四年一月から昭和五六年四月まで月額五〇〇円、昭和五六年五月から昭和六一年一二月までは月額六〇〇円<書証番号略>)の支払は必要であること、水質は徐々に悪化していったと考えられること、水道水が全て飲用に供されるわけではないことなどからすれば、原告らが建物を建築した時期から水道問題が発生した前年である昭和五九年一二月までは基本料金の四分の一、昭和六〇年一月から昭和六一年一一月(原告らの請求の終期)までは基本料金の二分の一をもって、その損害と認めるのが相当である。原告らの建物の建築時期及び損害額並びに証拠関係は、別表④記載のとおりである。

(三) 次に先に認定したような水道問題が発生してから直送方式へ切り換えるまでの経過及び水道水の状態からすれば、これを知った居住者や滞在者が昭和六〇年八月から昭和六二年一二月までの間に、滞在時の飲料水を持参したり、購入したり、貰い水等を運搬したりしたことは十分想像できるところであり、定住者の場合、その労力も少なくなく、そのために損害が生じていた可能性は否定しがたい。しかし、運搬費については、定住者か一時滞在者かで大きく異なり、飲料水を調達した場所や運搬回数、飲料水の調達のためだけに自動車を利用したのか否か等具体的事情によって千差万別であり、概括的な推定もできない。したがって、これらの事情が明らかでなかったり、右期間以外の時期の運搬費を請求している原告ら(原告番号6・8・13・17・24・31・32・35・43・48)については、その請求を認めることはできない。

その他の原告らについては、白浜緑光台に定住していたり、右期間内に滞在し、飲料水を運搬していたことが推認され、原告らの作成した上申書等には、タクシーで飲料水を月に何回も運搬していた等の記載はあるが、これに対応する客観的な資料が提出されていないだけでなく、飲料水の運搬のためのみにタクシーを利用したのか明らかでないとか、買い物の折りに飲料水を調達するような対応ができなかったのか等疑問も多く、直ちに原告らの主張額を認容することは困難である。これらの事情を考慮し、次の原告らについて、左記認定額の限度で損害を認めるものとする。

原告岡部正美(原告番号18) 二万円(<書証番号略>)

原告勢田冨夫(同19) 二万円(<書証番号略>)

原告乾慶行(同21) 二万円(<書証番号略>)

原告八木升(同22) 一〇〇〇円(<書証番号略>)

原告服部良雄(同23) 二万円(<書証番号略>)

原告中嶋好子(同36) 二万円(<書証番号略>)

(四) そして、被告伊藤忠は、給水装置施設の設置者であり、白浜町と東新不動産が合意した給水装置工事許可条件を引継ぎ、かつ、昭和五三年六月以降は簡易専用水道の設置者として水道法上の義務を負担していたものであり、被告ハウジングは、被告伊藤忠から管理を委託されて原告らと直接管理契約を締結していたものであり、被告管理会社は、被告伊藤忠から原告らとの間の契約関係の承継とともに給水装置施設等の譲渡を受け、被告ハウジングから管理業務を引き継いたものであるところ、右(二)(三)の損害は、被告らがいずれも水質の管理等を行っていなかったことから生じた損害であるから、共同して責任を負うべきものと解するのが相当である。被告伊藤忠は、移管条項により、被告管理会社に契約上の地位を譲渡しており、これによって被告管理会社が被告伊藤忠がこれらの施設を所有していた当時に生じた損害賠償債務についても免責的に被告管理会社が引き受けたものであり、被告伊藤忠には管理契約上の責任がないと主張するが、移管条項は、その文言からも明らかなように、諸施設の維持管理業務を第三者に委託もしくは移管することができるとしているに過ぎず、自らが管理している間に生じた債務まで移管により消滅させることを規定したものでないことは明らかであり、被告伊藤忠の右主張は採用できない。

(五) 原告らの一部は、右各損害のほか、腐敗水を飲用したことにより腹痛、下痢を起こすなど健康上の被害が生じたとして、その治療費及び慰謝料を請求しているところ、前認定のような飲料水を常用していた者のうち、体調に影響が出た者がいないとはいえないが、原告らのうち、治療費を請求している者は六名、慰謝料を請求している者は七名に過ぎず、原告社会福祉法人阪南福祉事業会の白浜山荘は多数の者が利用していることが認められるが(<書証番号略>)、特に問題が生じた形跡もないし、右六名の原告以外に水道水の飲用により健康被害が生じたことを訴えている者も見当たらない(証人佐々木弘)ことからすれば、健康被害についての診断書等客観的な証拠資料も全く提出されていない以上、このような損害を認定することはできない。

4  建設協力金

別表①の「協力金」欄に三万円と記載した原告らは、本件別荘地に建物を建築する際に、建築協力金の名目で被告管理会社に三万円を徴収されたとして、これを不当利得であると主張する。

しかし、売買契約書四条によれば、工事施工等において売主及び第三者に損害を与え、道路、側溝などに損傷を生じさせた場合には、買主は速やかにその責任と負担において原状回復などの損害補填をするものと規定されているところ(<書証番号略>)、建物を建築する際にそのような道路等の損傷が生じてその補修や清掃をしなければならない事例があっても、被告管理会社において、個別に損害の賠償を求めることが容易でないことから、建築時に一律に三万円を徴収して、このような損傷の補修費に充てることとし、建物を建築する者の了解を得て徴収することとしたものであることが認められ(<書証番号略>)、損傷発生の蓋然性、、金額の程度、適当な代替手段の欠缺等に照らせば、あながち不合理ともいえず、契約の趣旨にもとるものともいえないから、法律上の原因のない金銭の交付であるとはいい難い。よって、その他の点について検討するまでもなく、右請求は理由がない。

四被告管理会社の請求(反訴)について

被告管理会社の反訴請求は、その請求原因事実のすべてについて当事者間に争いがなく、原告らの抗弁がいずれも認められないことは先に判示したとおりであるから、被告管理会社が反訴において請求している別表②の管理費の請求については理由があることになる。

第四結論

一本訴請求について

以上に判断をしてきたとおり、原告らの被告らに対する本訴請求は、温泉契約の期間満了による終了を原因として、被告管理会社に対し、量水器保証金の残金(その額は別表⑤記載のとおり)の支払を求め、管理契約上の債務不履行による損害賠償として、被告らに対し、水道代及び運搬費(その額は別表⑥記載のとおり)の支払を求める請求の一部及び右金額と各被告らに対する催告ないしは訴状送達の日の翌日(別表⑤⑥の「起算日」のとおり)から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるからこれを認容するが、その余の請求はいずれも理由がないから棄却する。

二反訴請求について

被告管理会社が、原告(反訴被告)らに対し、管理契約に基づく管理費及び温泉契約に基づく温泉使用料の支払義務の履行として、別表②の「請求債権」欄記載の管理費及び温泉使用料とこれらに対する各年度分の支払日の翌日(同表の「起算日」のとおり)から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める反訴請求はすべて理由があるから、これを認容する。よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官井垣敏生 裁判官田中昌利 裁判官清水俊彦)

別表①

別表②

別表 ③  〔施設負担金及び温泉負担金収支明細書〕

別表 ④

別表⑤

No.

原告氏名

金額

起算日

1

2

3

4

8

9

10

11

12

13

14

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25

26

27

29

32

33

34

35

36

37

41

42

43

44

45

48

田中忠彦

有限会社八平

西健男

木下千鶴

井村昭弥

伊藤利也

小川俊子

北口源市

西川文子

後藤一善

社会福祉法人阪南福祉事業会

古川毅

福本尚三

岡部正美

勢田冨夫

西山津代

乾慶行

八木升

服部良雄

三木克宏

広川弘治

山本弥素典

野口タカ子

濵口博志

松本静子

高島音次

西田達生

山本栄

中嶋好子

酒井三郎

天岸寛晄

宮西輝夫

平田郁代

原寅一

田中茂

西沢清子

一万六六〇〇円

一万九五〇〇円

二万一〇〇〇円

一万五一〇〇円

一万四〇〇〇円

一万四〇〇〇円

一万四〇〇〇円

一万七六〇〇円

一万七六〇〇円

五八〇〇円

一万四〇〇〇円

九四〇〇円

一万四〇〇〇円

一万九五〇〇円

一万四〇〇〇円

一万四〇〇〇円

一万四〇〇〇円

一万五七〇〇円

一万四〇〇〇円

一万七六〇〇円

一万四〇〇〇円

一万四〇〇〇円

一万四〇〇〇円

一万四〇〇〇円

一万七六〇〇円

一万四〇〇〇円

一万九〇〇〇円

一万四〇〇〇円

一万四〇〇〇円

一万七六〇〇円

一万六六〇〇円

一万六六〇〇円

一万〇五〇〇円

一万七六〇〇円

一万四〇〇〇円

一万一二〇〇円

昭和六三年五月八日

50

51

原田啓子

三宮英二郎

三万〇〇〇〇円

三万〇〇〇〇円

平成二年一二月七日

54

久保敏夫

三万〇〇〇〇円

平成二年一二月二八日

57

株式会社扇屋式服店

三万〇〇〇〇円

平成三年三月二〇日

別表⑥

No.

原告氏名

金額

起算日

1

2

4

5

6

8

9

10

11

12

13

14

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25

26

29

30

32

33

34

35

36

37

39

41

42

43

44

45

48

田中忠彦

有限会社八平

木下千鶴

松下清次

小林米一郎

井村昭弥

伊藤利也

小川俊子

北口源市

西川文子

後藤一善

社会福祉法人阪南福祉事業会

古川毅

福本尚三

岡部正美

勢田冨夫

西山津代

乾慶行

八木升

服部良雄

三木克宏

広川弘治

山本弥素典

濵口博志

川邉数雄

松本静子

高島音次

西田達生

山本栄

中嶋好子

酒井三郎

由上登

天岸寛晄

宮西輝夫

平田郁代

原寅一

田中茂

西沢清子

一万四九〇〇円

一万三五二五円

一万三〇二五円

一万〇七七五円

一万二九〇〇円

一万五四〇〇円

四八〇〇円

三九〇〇円

一万五四〇〇円

一万六九〇〇円

一万二九〇〇円

一万四二七五円

九一五〇円

一万二七七五円

三万四四〇〇円

二万九七七五円

一万一四〇〇円

三万五〇二五円

一万三〇二五円

二万六〇〇〇円

一万四九〇〇円

九〇二五円

八四〇〇円

一万〇四〇〇円

七四〇〇円

一万五二七五円

一万二二七五円

一八〇〇円

五七〇〇円

二万一八〇〇円

一万四四〇〇円

一万二九〇〇円

一万三九〇〇円

一万三九〇〇円

一万一二七五円

一万五四〇〇円

一万二四〇〇円

一万五四〇〇円

被告伊藤忠につき

昭和六三年五月一〇日から

被告ハウジングにつき

昭和六三年五月八日から

被告管理会社につき

昭和六三年五月八日から

54

久保敏夫

一万五〇二五円

被告伊藤忠につき

昭和六三年五月一〇日から

被告ハウジング及び

被告管理会社につき

昭和六三年五月八日から

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